溝がないと速くなるのはなぜ? レースで使用されるスリックタイヤとは?
「スリックタイヤ」とは、ロードレースなどの競技にのみ使用される、溝が入っていない公道では使用できない競技専用タイヤのことです。溝がないと滑ってしまいそうだと思われがちですが、溝がない方がグリップ力は高くなるのです。それは何故なのでしょうか?
競技専用タイヤには、何故溝がないのか?
街中で見かけるくるまやバイクに付いているタイヤをよく見ると、ただの黒い塊ではなく、模様のように溝が入っています。
この溝はただの模様ではなく、どんな天候や状況でも、車両が安定して走れるように開発された、タイヤの性能を上げるための技術のひとつなのですが、この溝が一切入っていないタイヤが存在します。それが「スリックタイヤ」と呼ばれる、ロードレースに使用される競技専用タイヤです。
ではなぜ、レース用のタイヤには溝が必要ないのか?
溝がないと聞くとツルツル滑ってしまい逆に危険なのでは?
と思いがちですが、溝がない分、路面とタイヤの接地面積が広くなり、逆に路面とのグリップ(路面を掴む力)が上がるという仕組みになっているのです。
グリップの仕組みを簡単にいうと、路面と接地したときに起こる摩擦熱によってタイヤの表面を溶かし、路面とタイヤがくっつく、とイメージするとわかりやすいかと思います。
そもそもタイヤの溝は、雨の日など路面とタイヤの間に貯まる水を排出することが基本的な役割となっているので、短い時間で争われ雨の心配がないレースでは溝が必要ないということになります。ちなみに、雨の日には、溝が入ったレース専用のレインタイヤが用意されています。
世界最高峰の2輪ロードレースMotoGPにてレースタイヤの開発に携わってきた、ブリヂストンタイヤの山田宏さんによると「普段よりも速い速度域で走るレースでは、溝があることでタイヤの劣化が早く進んでしまうというデメリットもあります。溝の縁が熱や摩擦によって、よれてちぎれてしまったりすることから起こる現象なのですが、レース専用タイヤには速く走ることに加えて、レース速度で決められた周回数を走りきるためにも、タイヤのライフ(寿命)を持たせることも重要になってくるので、溝がある必要性がないんです」と、スリックタイヤに溝がないもうひとつの理由を教えてくれました。