トヨタ新「アルファード・ヴェルファイア」が最高だった! 成熟した「快適性&走行性」がスゴイ! シリーズ初“1000万円”超え「PHEV」の感想は?【試乗記】
快適性とドライバーズカーとしての魅力は
フットワークはショーファーニーズに合わせて快適性重視かと思いきや、ドライバーズカーとしての魅力も格段に向上しています。

快適性は19インチを履きながらもアルファードの17インチ仕様を超えるレベルです。とにかくカドが無いまろやかな入力、しなやかでフリクションが抑えられた足の動き、時間をかけてゆっくり減衰させると言った“お作法”が、「シン・センチュリー」や「クラウンセダンFCEV」と同じ波長を感じさせます。
快適性重視のセットアップで旋回時にはクルマの動きが大きくなるかと思いきや、実際にはダルな印象はなく、動きは「ゆっくり」なのに「正確」であることに驚かされます。もう少し言うと、ステアリングの切り始めから切り戻しまでのロールコントロールが絶妙で、まるでダンパーやスタビライザーが電子制御されているような錯覚すら受けたほどです。
この印象を開発者に伝えると、床下の車両中央部にバッテリーを搭載による低重心化(HEVモデルに対してマイナス35mm)を活かし、専用のサスペンション(ショックアブソーバー減衰力をHEVモデルに対して低減)チューニングとEPS制御を実施に加えて、床下の空力改善(アンダーカバー範囲の拡大やマフラー形状の工夫)、アルミテープ(インパネ周り)が質感向上に貢献していると教えてくれました。
ちなみにアルファードとヴェルファイアでセットアップは異なります。乗り比べると「滑らかさ」を重視したアルファード、一方薄皮を1枚抜いたような「ダイレクト感」重視のヴェルファイアと言う違いはありますが、HEVモデルよりもその差は小さめです。
個人的には、19インチを履くヴェルファイアに対し、アルファードは若干タイヤに対して車体が負けている印象があり、走行性能の総合評価ではヴェルファイアが上回ると感じました。全体の走りの方向性はヴェルファイアがアルファードに寄った印象なので、ヴェルファイアのセットアップはもう一工夫欲しいなとも思い、例えばショーファーカーでありながらも「最強のハイウェイエクスプレス」としての完成度を目指せるのではないでしょうか。
ちなみにブレーキもショーファーニーズ合わせて進化しており、前後の制動力配分の最適化でノーズダウンを抑制する「スムーズストップ制御」を新たに採用。普通はブレーキを踏むとクルマは前のめりの姿勢になりますが、アルヴェルPHEVは前荷重になるも基本はフラットな姿勢のまま減速。更に停止間際のブレーキ抜きを車両側でコントロールをしてくれるので、誰でも熟練ドライバーのようなスムーズなブレーキが可能となっています。
トヨタの回生協調ブレーキでは、完全停止直前に踏力をわずかに抜くのがスムーズに止まるコツとされていましたが、スムーズストップ制御ではむしろ踏み切ったほうが上手に止まれます。現時点ではPHEV専用の機能ですが、これは他のモデルにも展開してほしい技術です。
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試乗の感想として、PHEV化によって「カーボンニュートラルへの貢献」だけでなく、「より快適な移動の幸せ」を実現したモデルに仕上がっていると感じました。
ズバリ「最強かつ最高のアルヴェル」と言えるでしょう。
価格はHEVモデル(E-Four)の183万円高でシリーズ唯一の1000万越えとなりますが、その価値は十分あると思っています。
ちなみに月販基準台数は200台/月(全体は8600台/月)となっていますが、現行モデルのデビュー時のような争奪戦にならないように「安定した供給」を期待したい所です。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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