EVの価格、これからどんどん下がる? 最大のポイントは電池価格、電池メーカー「AESCジャパン」でじっくり聞いた

2007年に日本で設立され、横浜に本社を置くAESCジャパンは、リチウムイオンバッテリーなどを生産しています。今回座間工場に赴き、色々と電池事情を聞いてみました。

EVの価格、これからどんどん下がる? 最大のポイントは電池価格

「EVって、どうしてガソリン車やハイブリッド車と比べて価格が高いのか?」
 
 そう感じているユーザーは少なくないでしょう。
 
 EVを販売しているメーカー各社にその理由を聞くと「最大の理由は、電池のコストが高いから」という答えが返ってくることが多いです。
 
 果たして、電池はそんなにコストが高いのでしょうか。

AESCジャパンの60kWhバッテリー
AESCジャパンの60kWhバッテリー

 今回、神奈川県内にある自動車用電池メーカーのAESCジャパンを訪れ、日産「リーフ」、「サクラ」、三菱「eKクロス EV」、「アウトランダーPHEV」に搭載されている電池の製造施設を視察することができました。

 あわせて、同社幹部とEV電池の市場動向、技術詳細、そしてコストについて意見交換しました。

 AESCジャパンの前身は、日産とNECトーキンによる合弁企業として2007年に設立した、オートモーティブ・エナジーサプライ社。

 2019年に日産から中国の再生可能エネルギー関連企業のエンビジョングループにバッテリー事業がすべて譲渡されましたが、現在はエンビジョングループの他、日産を含む複数のグローバル投資家から投資を受けており、2023年にAESCジャパンに社名を変更しています。

 日本、アメリカ、欧州、そして中国の6カ国に生産拠点を持ち、電極からバッテリーパックまでの生産と供給、さらにリサイクルを含めてそれぞれの国で完結する、地産地消を基本としたビジネスモデルを構築しています。

 今回訪問した座間工場は2010年稼働開始で、生産能力は3Gwh。

 ここでのノウハウを活かして、2024年に新設した茨城工場は生産能力20Gwhと大きく、日産のほか、ホンダとマツダにも電池を供給する体制を敷いています。

AESCジャパンの座間工場
AESCジャパンの座間工場

 では、AESCジャパンはどのような電池を生産しているのでしょうか。

 主力製品は、電極を積層したものをラミネートフィルムで包んだ「パウチ型」です。

 正極に、ニッケル・マンガン・コバルトを使用することで、それらの頭文字をとってNMC(3元系リチウムイオン電池)と言います。エネルギー密度が高く、航続距離が長いことが特徴です。

 現在、座間工場ではGEN4(第四世代)が主流ですが、茨城工場では電池の形が縦長のGEN5(第五世代)の生産が始まっているところです。

 こうしたNMC(3元系リチウムイオン電池)は、材料コストの市況が影響することから比較的コストが高いと言われています。

 それでも、初代リーフが市場導入された頃、筆者が世界各地で自動車向け電池の学会やシンポジウムに参加した際に各国の行政機関が公表した電池コストは、1kWhあたり米ドルで350ドル〜400ドル程度でした。

 これを将来的には量産効果によって200ドル、さらに100ドルに下げることを目標として、電池メーカー各社が研究開発を進めていたことを思い出します。

 AESCジャパンによれば、NMC(3元系リチウムイオン電池)のコストは現在、100ドル手前程度まで下がってきていると言いますが、世界的な材料コストの上昇などによって、100ドルを切るのは難しいという見方です。

 一方、正極材にはリチウムのほか、コストが安い鉄やリンを使うLFP(リン酸鉄リチウムイオン電池)の需要が近年、高まってきました。

 コバルトを使用しないことでコストを抑えることが可能です。特徴としては、「安全性や耐久性で優れている点」だとAESCジャパンは説明します。

 LFP(リン酸鉄リチウムイオン電池)については、2010年代から日本でも一部企業が生産を初めていましたが、EV向けではAESCジャパン(当時のAESC) を含めてNMC(3元系リチウムイオン電池)が主流という市場の図式でした。

 それが、中国電池メーカー各社が高性能なLFP(リン酸鉄リチウムイオン電池)を開発して中国地場自動車メーカー、さらに欧米自動車メーカーが採用したことでLFP(リン酸鉄リチウム電池)に注目が集まるようになったという市場の変化がありました。

 また、定置型電源についても、大型設備の需要がグローバルで高まっており、ここでもLFP(リン酸鉄リチウムイオン電池)の需要が高まっているところです。

 そのため、AESCジャパンとしても自動車メーカーや自動車部品メーカー、また電気設備関連メーカーなどの要望に対して、LFP(リン酸鉄リチウムイオン電池)のコスト低減や次世代化に向けた研究開発を進めています。

 あわせて、電池の形状・構造についても、パウチ型のほか、機械強度に優れた角型や製造コストが抑えられる円筒型など、多様なラインアップを取り揃えています。

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2件のコメント

  1. あとは充電装置の使いやすさと拠点増加ですね
    充電スタンドの増加が鍵かもしれませんね

  2. 将来的には避けては通れないというEV化。
    いずれは革新的技術開発が実現し、新しい形式のバッテリーパックが開発される事でしょう。
    しかし、車両価格に関してはどうでしょうか? 現在は地方自治体からの補助金を使ってEVが購入されています。このEV補助金がなくなった後もEVは安く売れるのでしょうか?例えバッテリーパックを値下げできた所でEV補助金が止まれば車両価格は上昇するのみだと思います。この調子でいつまでも補助金は続かない、出ないと思います。何故なら補助金の出どころは税収です。EVを購入しない方も負担を強いられています。「EV補助金はEVを買える金持ち優遇」としていずれどこかの時点で反発を引き起こすと思われます。

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