自動車の「紙カタログ廃止」に物申す! 何でも“デジタル化”の現代社会…「スマホで見れば十分」だけで片付けられない「譲れない魅力」とは
やっぱり何かさみしいし「味気ない」
いっぽう、Webカタログはどうでしょう。
もちろんWebサイトを制作するのも非常に大変ですし、クリエイターさんはWebのスクリプトやプラグインなどと格闘し、それぞれ組み込んで見やすく、しかも検索にもヒットしやすいページをつくります。

ただ、紙のカタログとは違い、ページ構成の制約や、何十回もやり取りが発生する色校正はゼロ。最大のデメリットである印刷コストなどの手間も大幅に軽減されます。
さらに、もしカタログに誤字脱字があった場合、刷った部数同数のシールを作って1枚ずつ貼っては訂正したり、あるいは訂正内容をまとめた紙を挟み込むなど、気が遠くなるほどの手間とコストが掛かりますが、Webであれば元データを修正して再度公開すれば完了。
このように、Webカタログにするだけで非常に効率化を図ることができます。
一方、実物を手にとって見ることができる「紙」が廃止されることで、ユーザーにとっては、カタログを見るために「画面が付いたデバイス」が必要になります。
もちろん「スマートフォンがあれば問題ないでしょ」と思われると思いますし、実際スマホがあれば、リンク先の動画をクリックすればイメージムービーで実車の音や映像を楽しむこともできます。
ただし、(この際書いてしまいますが)スマホの小さい画面でチマチマWebカタログを見るのはあまりにも味気ないですし、高齢者の方にとっては読みづらいことこの上ない仕様です。
かつてレコードがCDに置き換わり、手軽に高音質が楽しめるようになったことと引き替えに、ジャケット写真のデザインや美しさを味わう楽しみが失われてしまったときのことを思い出します。
また、紙のカタログのコレクターにとってはまさに死活問題です。
Webカタログはダウンロードできるものの、うまく「現物」として手元に保管できない仕様がほとんどですし、データを保管できたとしてもコレクションの観点からは物足りなさを感じます。
紙のカタログが本格的に廃止されれば、「閲覧用」「保存用」「予備」といった、最低でも「同じカタログを3冊保有する」といった、コレクター特有の嗜みも過去のものとなっていくのでしょう。
紙のカタログ、そしてWebカタログ、それぞれにメリットとデメリットがあります。
それを百も承知のうえで、Webカタログではどうも味気ないと考えてしまうのは、筆者(自動車ライター 松村透)のような、古い世代のクルマ好きゆえの思考回路なのでしょうか。
ボロボロになって、文字通り「穴が開く」まで憧れのクルマのカタログを熟読し、さらには保存用にネットオークションで同じものを手に入れ、やがて実車を手に入れる。
枕元で憧れのクルマや契約して納車待ちのクルマの紙カタログを眺め、心地良い眠りにつく。
1冊の紙カタログが人生を変えることだってあるのは、気のせいではないように思えてならないのです。
Writer: 松村透
株式会社キズナノート代表取締役。エディター/ライター/ディレクター/プランナー。
輸入車の取扱説明書制作を経て、2006年にベストモータリング/ホットバージョン公式サイトリニューアルを担当後、2013年に独立。フリーランスを経て株式会社キズナノートを設立。現在に至る。
2016年3月〜トヨタ GAZOO愛車広場連載中。ベストカー/ベストカーWeb/WebCARTOP他、外車王SOKEN/旧車王ヒストリア編集長を兼務する。
あと腰が痛くなる、片頭痛が悪化してしまう等健康面もあるかもしれませんね。自分も片頭痛持ちなので…。新しいタブレット買い替えたら今あるカタログをダウンロードをするしか無いです。でも時代の流れと言って仕方ないと思うかもしれませんがそれでもカタログが完全に無くすのは寂しい。自分は今まで貰ったカタログ、ブランドブックを修理したり等いつまでも保存します。