売れ線SUVの意外な悩みとは? 話題の国産コンパクトSUV「クロスビー」に試乗

ハスラーワイドにすると売れなくなる?

 「クロスビー」の発想の原点は、とあるクルマの拡大版だから。本質的には“続編”なのです。

2014年に登場した「ハスラー」

 果たしてその原点とは今から4年前の2014年に生まれた軽SUVのスズキ・ハスラー。これまたマンガから飛び出してきたようなポップデザインを持ち、しかも中身はベストセラー軽自動車のワゴンR。

 その他にないデザインと実用性の両立に一時は月販1万台を越える大ヒットとなり、4年目の今も4000〜6000台と信じられない売れ行きです。

 既に固定客が付いた事は明白で、実際「もっとデカいハスラーはないか?」「5人乗れる普通車版はできないのか?」という声もあり、そのリクエストに応えるカタチで生まれたのです。

 しかしなぜ「ビッグハスラー」「ハスラー2」などビッグヒットの続編を匂わせる車名にならなかったのか? 

 そこにはスズキならではのトラウマであり苦い想い出があります。

2014年型軽自動車「ワゴンR」
軽ワゴンRの拡大版「ワゴンRワイド」

 前述のベストセラー車、軽ワゴンRの拡大版「ワゴンRワイド」を作ったら、「見てくれは普通車版でも中身は軽でしょ?」と侮られ、思った以上に売れませんでした。

 よって同じく「ハスラーワイド」と名付けた場合、イメージを訴求しやすい反面、単なる軽SUVの拡大版とカン違いされる可能性があった。それを気にしての「クロスビー」という新車名なのです。

 もっともこれが逆の立場だったらハスラーブランドは使われたはずです。つまり最初に出たハスラーが大きい普通車版で、その小型版の軽を作ろうとした場合は「ミニハスラー」や「ハスラー2」、原点のイメージをそのまま使ったはずです。

 しかし実際には最初に出たのが小さな軽で、次に作ろうとしたのはその拡大版でした。

 ブランドを作る場合、上から下に降りてきた方が楽なのは明白で、その逆は難しい。ファッションに例えればよく分かりますが、ルイヴィトンの廉価版は売りやすくても、ユニクロの豪華版は作りにくいという訳です。

 かくもブランドの拡大とは難しいものなのです。ハードウェアの出来の良さ以上に、ブランドイメージを壊さないような続編を作らなければいけない。「クロスビー」にはその難しさが如実に表れています。

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