5速MT搭載! トヨタの「“最新型”AE86」が凄かった! 伝説の「パンダトレノカラー」ד画期的“「テンロクNAエンジン」採用! 「AE86 G16E」実際の印象はいかに
「乗りやすさ」に驚き! どんな印象?
今回は都内の一般道~高速道路を中心に走行を行ないましたが、走り始めて即座に感じたことはオリジナルの4A-Gよりも「乗りやすい」の一言です。
常用域(2000~4000rpm)は。以前試乗したことのあるいわゆる7A-G(1.8リッターの7A-FE型のブロックに4A-Gのヘッドを搭載したハイブリッドエンジン)以上にトルクが豊かで、軽量ボディも相まって街中でもすぐに5速に入ってしまうくらいです。
高速道路で追い越しのようなシーンでも、4A-Gなら間違いなくシフトダウンするだろうといった状況でも、G16Eはシフトキープのままグイグイと加速していきます。
まさに1.6リッターNAを感じさせないトルクバンドの広さやフレキシブルな特性に、クロスミッションならぬ「ワイドミッションが欲しい」と思ってしまったくらい(ちなみに100km/hのエンジン回転数は3500rpmくらい)。
フレキシブルな特性ながらも、アクセルを踏んだ時のキレの良い応答や回転フィールなどはスポーツエンジンらしさを感じる一方、回転上昇に伴いパワーが盛り上がっていくフィーリング、当時の言葉を使うと「カムに乗る」のような感じはなく、エンジンの伸び感も今一つでした。
もちろんレッドゾーンの7000rpmまでキッチリ回りますが、どちらかというと6000rpm前後でシフトアップしたほうがリズムよく走れる感じがしました。
要するに、四の五のいわずに思わず回してみたくなってしまうような「官能性」は薄めで、現状では「スポーツツインカム」と「ハイメカツインカム」の中間といったキャラクターのように感じました。
エンジン音は外で聞いていると3気筒を感じさせない低音の効いた乾いたサウンドですが、車内だと3気筒特有の軽めで濁音の多いサウンドで、どこか苦しそうに回っている印象も、スポーツ性をスポイルさせてしまっています。
個人的にはこのエンジンは万能な特性ではなく、意図的に尖らせた特性にしてあげたほうがいいと思いました。
この辺りはエンジンの内部パーツがターボ用と同じモノなので仕方ない所があるのも分かりますが、4A-Gに代わるエンジンということを考えると、少なからず手を入れる必要はあるでしょう。
ちなみにバランサーシャフトを廃止したことでエンジンの鼓動がリアルに感じられる一方で、振動はかなり大きめですが、3500~4000rpmくらいでスッとその振動が消えると「君は本当にAE86なの?」というくらい滑らかになります。
ただ、アイドリング時はシフトに触れると手がブルブル震えるほどのレベルで、これは古いAE86であることを考えても許容範囲とはいえません。
個人的にはバランスシャフトはあったほうがいいと思いますが、現状で装着するとエンジンをより高い位置に積む必要があるそうで、なんとも悩ましいところ。
フットワークはオリジナルよりもステアリングを切った時のノーズの入りが良くなった気がしました。エンジンの重量は4A-Gと同等レベルですが、搭載位置がより車体中央寄りになったことで、前後重量配分の適正化に加えて慣性モーメントが減った効果も大きいようです。
もちろん最新のサスペンションやタイヤのサポートの相乗効果もあるでしょうが、結果としてより素直、より自然に曲がれるようになったような気がします。
乗り心地はAE86としては相当高いレベルで、少ないストロークながらも路面入力を上手に吸収するいなしの効いたセットで、個人的には足の動きに関してはしなやかさすら感じたほどです。
さて、今回試乗したG16E NAエンジンは、現状では4A-Gと同じとはいえませんが、シッカリと育てると大きく化けそうなユニットに感じました。
AE86がメーカー、チューナー、ユーザーの三位一体で成長してきたように、このエンジンもそのように成長してほしいと願っています。そのためには任せる所はサードパーティに任せ、トヨタはトヨタでしかできない所をサポートしてあげる事が重要だと考えます。
現在市販化も検討中で、「価格はどうする?」「どのように提供すればいい?」「誰が換装するのか?」などを各方面で調査をしているそうです。
恐らくキット販売が基本でしょうが、例えばGRガレージが対応するなら車体側のリフレッシュとセットで提供など、チューナーとディーラーがカニバらないような策も考える必要もあるでしょう。
もちろん、オリジナル派にとっては「そんなの邪道」という人もいると思います。それはそれでいいと思いますが、21世紀に不安なく、安心してAE86に乗るための手段として「このような選択肢もあるよ」ということは是非とも知っておいてほしいです。
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ちなみに、「試してみないとわからない」という皆さんのために、サブスクを提供するKINTOのコンテンツの1つである旧車コミュニティ「Vintage Club by KINTO」の企画で、このG16E NAエンジン搭載のAE86に期間限定(現在は受付終了)でレンタル試乗できる機会が用意されました。
事前の抽選で当選された方のみとなりますが、一般の方にも試してもらえるチャンスが展開されています。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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