6速MT搭載! トヨタの「“最新”AE86」が凄かった! 「旧車そのまま」デザインד漢”の「2シーター」仕様採用! 「最新ユニット」で復活の「AE86 BEV」実際の印象はいかに
もはや「BEVに乗っていることを忘れる」仕上がり! どんな印象?
今回の試乗は都内の一般道です。「えっ!?」と思われる方もいるでしょうが、改造車検を通しナンバーを取得しています。
ギアを1速に入れ発進します。クラッチミートの容易さに「4A-Gなのに下のトルクあるな」と。そこからアクセルをグッと踏み込むと反応の良さに「アクセルワイヤーをピンと張ってるねぇ」と感心。
さらに、雑味の無いサウンドや段付きのない回転フィールに「この4A-G、バランス取りが入念に取りされているよね」。そのまま回すと「レッドゾーンまでタレることなくストレスなく伸びるな」と驚き。
そして、コーナー前でシフトダウンする際にヒール&トゥで回転を合わせると「最新のクルマと違い回転落ちも速いし、アクセルレスポンスも速いので、合わせるのが楽」と思わずニンマリ。
「(4A-Gはおろか、エンジンすら搭載しない)BEVなのに何を言っているの?」と思うでしょうが、乗っていると本当にこんな感じなのです。
正直BEVに乗っていることを忘れ、思わず「いいエンジンだね」と思ってしまうようなアナログなドライビングが可能です。
この辺りは制御により電動車らしいわかりやすい加速(レスポンスの鋭さ・低速からの強大なトルク発生)ではなく、ある意味「内燃エンジン車っぽい」特性への味付けに加えて、モーター回転数やアクセル開度に応じた「エンジンサウンド」をプラスしていることが大きいです。
この手のギミックは操作との連携がキモですが、AE86 BEV コンセプトのソレは完全に「だまされる」レベル。
クラッチ操作は基本的には動力伝達のON/OFFだけなのですが、本当に半クラッチをしているようなフィーリングになっています。つまり、上手に操作をすれば滑らかな発進が可能ですが、ラフに操作をすると「ガクガク」するクルマの動きまで再現されているのです。
ちなみに「BEVだ」と実感するのは絶対にエンストしないことと、シフト操作をせず高いギアで固定した状態でも普通に走れてしまうこと。さらに室内ではエンジンサウンドが聞こえますが、外では静かなBEVが走っているに過ぎないということくらいです。
ハンドリングはBEVの重さを感じない身のこなしの軽さはもちろん、コーナリング時はむしろオリジナルのAE86よりも鼻先が軽く、回頭性の高さと安定した旋回が可能でした。
この辺りはバッテリー搭載で、オリジナルより約110kg重くなっているとはいえ、1070kgの軽量ボディとオリジナルの重量配分54:46に対し、48:52としたのも効いているはず。
乗り心地を語るクルマではありませんが、硬派な見た目とは裏腹にAE86であることを考えれば上出来なレベル。
路面の凹凸は確実に拾いますが、内臓をゆさぶるようなショックではないので、皆さんが想像しているよりは快適に仕上がっています。この辺りは最新のサスペンションも効いているのでしょう。
ただ、イニシャルの高いLSDが装着されているので、交差点を曲がるくらいでも「ガキガキ」しますが、これはドリフト走行まで想定しているためです。
実は以前、富士スピードウェイ・ショートコースで佐々木 雅弘選手のドリフト走行を見せてもらったことがありますが、クルマの動きはAE86そのもの。ただ、無音なのにタイヤのスキール音だけが聞こえる状況は、ある意味不思議な感覚でした。
デジタル技術で「アナログを極める」とこんなクルマに仕上がる、ホンキで遊ぶ/ホンキでふざけるとBEVもこんなに面白くなり、素直にこんなクルマもアリだと感じました。
もちろん一品物であることや、実用性を含めて現状では完璧なモノではありませんが、ここで培ったアイデアを今後のBEVに活かすことで、「クルマならではのBEV」、「クルマ好きも納得のBEV」に繋がると信じています。
ただ、内容は異なりますが似たコンセプトでヒョンデ「IONIQ 5N」が登場している事を考えると、このまま夢物語で終わらせてはダメで、この“続き”も期待したいところです。
クルマ好きの中には「カーボンニュートラルといっても、自分とは関係ない」と思っている人も多いでしょう。
しかしカーボンニュートラルのために、これまで大事にしてきた「愛車」に乗れなくなってしまったら……。
そんな状況にしないためにも、クルマ好きもカーボンニュートラルをジブンごととしてもっと考えてほしい。そんなキッカケや架け橋になり得るクルマだと思っています。
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ちなみに、サブスクでおなじみのKINTOが提供するコンテンツの1つである旧車コミュニティ「Vintage Club by KINTO」の企画では、このAE86 BEVに期間限定でレンタル試乗できる機会がこれまで2度用意され(現在は受付終了)、貴重な試乗チャンスが展開されました。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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