スズキ「本格“3列”SUV」がスゴイ! 2.7リッター「V6」×ラダーフレーム採用! 全長4.6m超えでちょっとビッグな「グランドエスクード」とは
SUVといえばなんでも売れたわけではなく、今では存在が忘れられつつあるクルマもあります。でもそれが佳作だとしたら、今こそ見直してみたいもの。スズキ「グランドエスクード」もそんなSUVではないでしょうか。
2.7リッターV6を積んだ3列シートSUV
世は“SUV戦国時代”の様相を呈しており、各メーカーは魅力的なSUVを販売しています。しかし、現在の視点から見ると魅力的なのに、残念ながら当時、そして今でも注目されることが少ないSUVもいくつか存在します。
スズキの「グランドエスクード」もその一台です。
グランドエスクードは、1997年に登場したスズキ2代目「エスクード」に、3列シートを与えた7人乗りモデルとして2000年に追加されました。
初代エスクードは、まだSUVという言葉が日本に無かった1988年にデビュー。都会的な内外装を持ったコンパクトSUVとして誕生しました。
悪路にも強い一方でオンロードユースの快適性・操縦性を重視し、燃費も良い初代エスクードは、世界中でヒットしました。
エスクードはいわゆる「ライトクロカン」のはしりといえるモデルで、SUV時代を切り開いた初代のトヨタ「RAV4」(1994年登場)に、大きな影響を与えました。
2代目エスクードでも、初代同様に悪路に強い性格を維持していましたが、丸みを帯びたデザインを得たことで、さらに4輪駆動車のハードなイメージを払拭。
初代の途中で追加された2リッター直列4気筒エンジン、2.5リッターV型6気筒エンジン、ホイールベースを延長した5ドア車の設定も、初代から引き継ぎました。
さらにグランドエスクードでは、5ドア車のホイールベースを320mm延長。全長は5ドア比で約500mm伸ばされて4.6mをオーバーしており、もはやコンパクトSUVとは呼べない車格に成長していました。
ノーマルの5ドア車との外観上における差異は、主に車体後半に集中しており、ホイールベース・車体を伸ばした分は、リアドアとリアオーバーハング延長および室内後部空間の拡大に充当。
車内には3列目のシートを備えていました。SUVの3列目シートはプラスアルファの側面が強い場合もあり、グランドエスクードでもその域を出ませんでしたが、居住空間は十分に確保されていました。
3列目シートへのアクセスは、200mmスライドできる2列目シートを前方に移動して行います。
メカニズム面では、車体の大型化に伴い車重が230kg増加したことを受け、V型6気筒エンジンの排気量を2.7リッターに拡大。+27psアップの177psを発生しました。
実はグランドエスクードは、北米で日本よりも早く1998年から発売をスタートしており、車名もグランドエスクードではなく「XL-7」とされていました。メインの販売市場も北米で、同市場での販売は好調でした。
なお余談ですが、エスクードは海外では世代や仕向地に応じて「サイドキック」「ビターラ」「グランドビターラ」など、様々な車名を持ちます。ただしグランドビターラには7人乗りの設定がありません。
その後、グランドエスクードは2003年にはマイナーチェンジを受け、フロントを中心にデザインを変更。ヘッドライトが縦方向に、グリルが横方向に拡大され、おだやかな表情から派手で迫力あるマスクに一変しました。
ただしこのデザインチェンジはグランドエスクードのみで、通常のエスクードでは実施されませんでした。
この際、グランドエスクードの2.7リッターエンジンはパワーアップを受けて184psを獲得。レバー式だった4WDシステムの切り替えがダッシュボード上のスイッチに変更されるなど、各部の改良も行われました。
しかし2005年、3代目エスクードが登場したことでグランドエスクードの生産も終了。
同時期に北米では2代目XL7(車名からハイフンが消えている)が発表され、2020年からはインドネシアのスズキが3代目XL7を製造していますが、日本国内では3列シートを持つエスクードは現在まで出現していません。
結果として日本では、グランドエスクードを含む2代目エスクードの販売台数は伸び悩みました。
2代目が販売されていた1997〜2005年頃は、乗用車ベースのSUVが増え始めており、エスクードのラダーフレーム構造は走行性能や快適性にマイナスに働きました。丸みを帯びたデザインも、初代ほどのキャラクター性を有していませんでした。
そのため当時、そして今に至るまで、2代目エスクードはなかなか注目されないSUVになってしまったのでしょう。
※ ※ ※
当時は大きいと感じたグランドエスクードの車体も、現在の基準では乗りやすいサイズ。3列シートのSUVの中では、むしろコンパクトな部類です。
ラダーフレーム構造とトランスファー付きの4WDシステムは、乗用車ベースのSUVばかりとなった今では硬派なイメージで、しかも悪路走行もバッチリ。
所有感や運転の喜びを高めるV型6気筒エンジンも、現行型のSUVでは高額車でさえ貴重になりつつあります。今の技術とデザインでグランドエスクードと同じコンセプトでまとめれば、商品力の高いSUVが誕生しそうです。
時代が一巡して、今だからこそ見直したい佳作。グランドエスクードは、まさしくそんなSUVなのではないでしょうか。
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。
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