ひと晩で「12台も盗難される…」なぜ? 大量盗難が増えている理由は? でも「ほぼ全部発見されている!?」 意外な理由とは
2024年では1度に複数のクルマが盗まれる例が多発しています。その理由にはどのような背景があるのでしょうか。
大量盗難が増えている理由とほぼ全部発見されているナゾを解明!
最近、ディーラーや中古車販売店、空港利用者向け駐車場などで一度に複数のクルマが盗まれる例が多発しています。
中古車展示場からの盗難はいまに始まったことではありませんが、今年に入ってから急増している印象があります。
従業員が全力で捜索した結果、全車発見されるケースも増えておりそれをメディアが密着取材などという形で大きく報道することで、大量盗難の実態が多くの人々に知られるようになりました。
2024年1月29日に群馬県館林市で8台が盗まれたことに始まる旧ビッグモーター店舗での盗難は4県6店舗で合計29台が盗まれました。
公開されている以外では合計50台以上が盗まれたという情報もあります。
また成田空港周辺に複数の拠点を持つパーキングにて、ひと晩で「高級車9台」盗難された被害もありました。
このほか、公開はされていませんが関東地方の新車ディーラーなどからも複数台の中古車が盗難されたことがわかっています。これらのお店は当然ですが盗難車両の捜索も積極的にはしていません。
なぜなら販売用の展示車両ならまだしも、整備や点検、修理、そして旅行中などで預かっていたお客さんのクルマが盗難されたとなれば店舗のイメージが大変悪くなります。
「管理が悪い」「危機管理ができていない」「客のクルマをたいせつに扱わない」などの情報が広まることによるイメージダウンや、窃盗犯に「あの会社は防犯意識がゆるいから、また盗みに行こう」など再犯を促す危険もあるからです。
このような大量盗難に関して各種の報道や筆者が現地に足を運んで取材した事実から、いくつかの共通点があることがわかりました。
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・1度に複数のクルマを盗む複数窃盗がほとんど。例えば1回3名3台×3回で合計9台、1回2名2台×3回で6台など。
・アルファードやランクルなどの人気車種ではなく、盗みやすい場所にあってセキュリティが甘い(鍵をつけっぱなしなど)クルマを手あたり次第盗む
・手口はかなり荒っぽい。事務所のガラスを割って侵入し保管されている鍵を盗んだり、駐車場のフェンスを壊したりして盗む。プロの自動車盗のプロではないため、侵入盗のような盗み方をする。
・CANインベーダーやGAME BOYなどの最新窃盗ツールを使用しない。これらのツールは1台100万円以上するのが一般的なので、潤沢な資金がない「にわか自動車盗」はそこまでの投資ができない。
・防犯カメラやドラレコがほぼそのまま作動していることが多い。自動車盗の専門であれば、カメラやドラレコなど確実に証拠が残るものはカメラを覆ったり、Wi-Fiで妨害電波を出したりして作動させないようにする。
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このような傾向が強くあります。そして大量盗難が起きたお店の防犯カメラや車内のドラレコに記録されていた会話の内容からもわかる通り、ほぼすべてがベトナム、カンボジアなど外国人窃盗団の仕業だと考えられます。
なおベトナム人が増えているという実態は警察庁の犯罪統計「来日外国人の重要犯罪統計」にも表れており、「2022年1-12月10名」「2023年1-12月18名」となっています。
そして2024年は1-9月で22名とすでに2023年通年を上回っている状況です。いずれも国籍別のワースト1位です。
また、自動車盗を含む「重要窃盗犯」の検挙人数に関しても2023年は総数323件のうち約半数となる151件がベトナム籍です。
2024年1-9月では総数269件のうちアジア国籍が221件、ベトナム籍は118件(前年同期82件)とダントツに多い数字となっています。
ただし、注意すべきはこれらはあくまでも「来日外国人」だけの数字であるということです。
来日外国人の中には日本に定住している外国人は含まれていません。また、難民申請中や仮放免中などで在留資格が不明な外国人も含まれません。
ベトナム人の多くは技能実習生などの身分で日本に入国することが多いため、逮捕されて身分が判明しやすいことから、警察庁の統計に数字として表れやすくなっている可能性もあるでしょう。
また大量盗難されたクルマがコインパーキングなどで発見されるケースが多いのには理由があります。
盗みやすいクルマを手あたり次第盗む外国人窃盗団は初心者が多く、盗んだ自動車を流通(換金)させるルートを持っていません。
これまで取引が全くないヤードなどに買い取ってもらうことはとてもむつかしく、結果的に盗んだはいいが買い取ってくれる会社やヤードが見つからず、仕方なくコインパーキングに置いて逃走。
そのうち盗難された車両を捜索する被害者たちによって発見されるパターンが多いのではないかと推測されます。
ところで、盗難されたクルマが発見される店と発見されない店の違いは何なのでしょうか。
それは盗まれた店側が店名や防犯カメラの映像、盗難車の情報などを積極的に公開して盗難発覚直後から素早く対応しSNSなどで情報を公開しスタッフ総出で探しに行くかどうかで変わるようです。
Writer: 加藤久美子
山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。
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