えええええ!? 都営バス「約8割が赤字」でも生き残っているワケ 「一発逆転の黒字化」を阻む「東京都心」という魔境地帯

東京都心の隅々に路線を巡らせる都営バスですが、経営的には赤字だと言います。なぜ黒字が難しいのでしょうか。背景には東京特有の事情もあるといいます。

都営バス 意外と経営苦しい現状

 東京の都心部で生活や仕事をしている人は、都営バスに乗る機会も少なくないでしょう。大都会を走るバスというだけあって「乗っても座れない場合がほとんど」と感じるかもしれません。
 
 言い換えれば「繁盛している」ように見えますが、実のところ都営バスは経営的に赤字です。

都営バス(画像:写真AC)。
都営バス(画像:写真AC)。

 東京都交通局が発行している2023年版の『経営レポート』によると、都営バスの「営業収益」は約387億円。これは、一般企業の売上高に当たるものです。

 一方で、最終的な損益になると、約18億円の純損失です。地下鉄などを含めた都営交通全体で見ても、約21億円の損失となっています。

 路線別に見ると、「赤字路線」「黒字路線」は大きくばらつきがあります。これらを判断する指標が「営業係数
というものです。

 営業係数というのは「100円の収入を得るのにかかる費用」のこと。100を切れば一応の儲けが出る状態、逆に100を上回ると収入より費用の方が多くかかっている状態です。

 具体例を出すと、錦糸町駅前〜門前仲町を結ぶ「都07」系統は、1日あたりの収入が300万円超で、営業係数も78と優秀な数字を残しています。

 起終点の両方が複数路線を持つ駅であることだけでなく、途中のルートには都営新宿線の西大島駅や商店街・大型商業施設が並び住民も多い砂町エリア、江東運転免許試験場、東京メトロ東西線の木場駅など、移動需要を効率的にピックアップしています。

 他にも、錦糸町駅前~東京駅丸の内北口を結ぶ「東22」系統、池袋駅東口から明治通りを進み王子駅前から荒川を越えて西新井駅前に至る「王40」系統など、ターミナル駅や企業も住民も多い地域の路線が「営業係数100未満」の黒字路線です。

 こうした、営業係数が100を切る系統は、全127系統のうちわずか26系統しかありません。残りは収支がトントンか赤字というわけです。

 走れば走るほど赤字がかさんでいく都営バスの現状。しかし都営バスは「公営の路線バス」です。私企業が参入を渋るような、儲けを出しにくい「交通空白地帯」を埋める役割を持つことも少なくないからです。また、高齢者や障がい者といった「交通弱者」にとって、日常の足となっているケースもあります。

 そもそも、営業係数こそ100を大きく上回る赤字路線なものの、1日あたりの乗車人員の絶対数は1万人前後の路線もいくつか見られます。その路線を必要としている利用者自体はかなり多いということです。

 やはり都営バスは「財政規模が大きい」という点が大きいです。地域内の経済状況も良好な東京都が運営しているため、日本の他地域の路線バスから比べればまだ良い環境にあるのかもしれません。

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