斬新すぎる「インパクト強烈バン」実車展示! “バニング”のような「巨大バンパー」装着! 実は「大事な働くクルマ」だった? その正体とは

高速道路の展示会「ハイウェイテクノフェア2024」で、不思議な装備を持つ車両が展示されていました。一体どのような車両なのでしょうか。

バニングのような「首都高所有のバン」 その役割は?

 2024年9月27日から28日にかけて開催された、高速道路に関する国内最大級の展示会「ハイウェイテクノフェア2024」を取材しました。
 
 会場内には、NEXCO東日本・中日本・西日本や、首都高速道路など全国の道路交通事業者、大手建設会社、そして交通関連の機器メーカーなどが集結。
 
 高速道路と一般有料道路に関するさまざまなテクノロジーについて、実物を見ながら開発・運用担当者から詳しい話が聞ける貴重な機会です。

首都高速の「ETC電波測定車」(画像:桃田健史撮影)。
首都高速の「ETC電波測定車」(画像:桃田健史撮影)。

 そんな中、多くの人が「これっていったい何のためのクルマ?」と足を止めて、その姿に見入っている光景に出くわしました。

 それが、首都高速道路のブースにある「ETC電波測定車」。

 とにかく、その外観のインパクトは強烈でした。少々言い過ぎな表現かもしれませんが、まるでかつて流行したミニバンカスタムの「バニング」のようです。

 バニングとは、海外のカスタムカーのイメージを国内ミニバンに応用した手法のこと。当局の取締りが厳しくなった近年は、派手なバニングに遭遇する機会はめっきり減った印象があります。

 そんなバニングを彷彿させるような、前方に大きく張り出したフロントバンパー。さらにルーフ前部にも機材が並んでいます。

 首都高速道路の関係者によると、フロントバンパーおよびルーフ全部に装着しているのはアンテナで、これでETCの電波を測定するといいます。

 まず、改めてETCについて説明すると、ETCとは「エレクトロニック・トール・コレクション」の略称で、電気的に自動でトール(toll=通行料金)を収集する仕組みのことです。

 全国各地の高速道路や一般有料道路でETC、また最新版のETC2.0が普及していますが、これはETCを統一規格とすることで実現したもの。

 システムの概要としては、料金所を通過する際、料金所の上部に設置された「路側アンテナ」から、クルマの「ETC車載器」と双方向で無線通信を行っています。

 料金所の入口では、車両情報・ETCカード契約情報・車載器IDなど検出し、さらにどの料金を何時に通過したかなどの情報を書き込んでからバーが開いて通過するという流れ。

 また、出口では、出入り口情報等から走行時間などに紐づく割引料金を即時に決済して、その金額を電光表示板で示します。

 日常生活の中では、すっかり当たり前の存在になっているETCですが、実はこうした短時間の情報処理が行われているのです。

 こうしてETCの仕組みを確認した上で、ETC電波測定車は何をしているのかに話を戻しましょう。

 ここでいう「電波」とは、DSRCのことを指します。

 DSRCとは、「デディケーテッド・ショート・レンジ・コミュニケーション」の略称で、日本語では「狭域通信」となります。そのひとつを用いたETCは、周波数帯5.8GHzを使用したDSRCなのです。

 料金所の上部にある路側アンテナから、ETC車載器に対して、比較的狭い照射角度で通信を行います。

 ETC電波測定車は、このDSRCの電波が正常に発信されているかどうか、その電波はどの場所でどのように届いているのかを測定することで、路側アンテナの作動状態を点検することが役目となります。

 ETC電波測定車の前部のアンテナは、車幅いっぱいを使って横方向に広い範囲で測定するために、これだけ大きな装着位置になっています。

 また、上下方向での測定を行うため、路面に近いところではフロントバンパーに装着しているアンテナで、また路面から2m弱の位置でルーフに装着しているアンテナが測定するという、二段構えを取っているのです。

 さらに、車両の通過位置を正確に判断するため、ルーフ後方の側面部には、複数のレーザーを照射するいわゆるライダー(LiDAR)を装着しています。

 これら各種機器から得たデータを可視化すると、電波の強いところで赤色、さらに黄色、緑色、青色と電波の強弱がひと目で分かるようになります。

 こうしたDSRC通信のみで対応しているETCは日本のみの特徴で、国土交通省によれば有料道路のあるドイツ、フランス、スイスでは車載GPSを活用したり、DSRCと併用して通行料金を収受しています。

 車載GPSで管理すれば、高速道路以外の一般道路でもETC機能を運用することが可能であり、さまざまな用途で使うことが想定されますが、日本ではいまのところETCの運用は高速道路と有料道路(一部を除く)に限定している状況です。

 最後に、令和5年(2023年)3月時点での主要な高速道路事業者のETCが利用可能な料金所の数と、全料金所における普及率を紹介します。

 ・NEXCO東日本:457箇所(うち一般有料道路111箇所)。普及率100%。
 ・NEXCO中日本:288箇所(同43箇所)、同100%。 
 ・NEXCO西日本:443箇所(同107箇所)、高速道路100%、一般有料は98.2%。
 ・首都高速道路:179箇所、100%。
 ・阪神高速道路:143箇所、100%。
 ・本州四国連絡高速道路:38箇所、100%。
 ・名古屋高速道路:49箇所、100%。
 ・福岡北九州高速道路:65箇所、100%。
 ・広島高速道路:14箇所、100%。

 あなたも今後、どこかでETC電波測定車に遭遇することがあるかもしれません。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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