SUVのスタッドレスタイヤはどう選べば良いの? 横浜ゴム「iceGUARD 7」と「iceGUARD SUV G075」にはどんな違いがある? 同条件で試乗してみた
「iceGUARD 7」と「iceGUARD SUV」ではそれぞれ得意ステージが異なる
iceGUARD SUVとiceGUARD 7を乗り比べて思ったのは、氷上性能にこだわるなら、SUVユーザーもiceGUARD 7を買っておけば安心ということです。
いっぽうでiceGUARD SUVがすべてにおいてiceGUARD 7に対して劣っているかといえば、決してそうではありません。アドバンテージもしっかりあります。
ひとつは、雪上の性能。iceGUARD SUVはiceGUARD 7に対して溝面積が多く、また溝もより深いので「雪柱せん断力」と呼ばれる、踏み固めた雪の柱を排出する能力が高く、それにより深い雪やシャーベット路面でトラクションをしっかり稼げます。
また耐摩耗性能はどちらも同等ですが、iceGUARD SUVは溝が深い(8.8mmのiceGUARD 7に対してiceGUARD SUVは10.5mmある)ため、摩耗してもスタッドレスタイヤとして使える期間が長いのもポイント。そしてなにより、iceGUARD SUVはiceGUARD 7に対してリーズナブルな価格で販売されているのも魅力です。店舗によっては同じサイズでもiceGUARD SUVはiceGUARD 7の3分の2ほどの金額で買えることもあります。
選び方としては、氷上性能を重視するならiceGUARD 7を選べば間違いないでしょう。いっぽうで、そこまで高い氷上性能を求めないのであればiceGUARD SUVを選ぶのも賢い選択(といっても最新商品に比べれば控えめというレベルで十分に安心できる実力を持つ)。また、深く積もった雪道での性能を重視する人もiceGUARD SUVがオススメです。
加えて、iceGUARD SUVはリーズナブルにスタッドレスタイヤを選びたいというSUVユーザーとのマッチングもいでしょう。
SUVだからといって銘柄がひとつしか選べないのではなく、価格も含めて違いのある選択肢が用意されているのは消費者にとってありがたいことです。それゆえに両銘柄のどちらを選ぶのか迷いがちですが、乗り比べてみるとキャラクターの違いが意外にありました。そこを抑えれば自分のニーズにマッチしたタイヤが選べることでしょう。
さまざまな車種で試乗して見えた「iceGUARD 7」の能力の高さ
さて、ここからはiceGUARD 7をいろんなクルマで試して、そのマッチングを確認してみたのでお伝えしましょう。
iceGUARD 7を履いたポルシェ「マカン」の印象は「コントローラブルで抜群に楽しい」です。
路面はアイスバーンの上に薄く雪が積もっているという状況でしたが、iceGUARD 7は滑り出しが分かりやすく、スタビリティコントロールをオンにして走ればハイパワーでもひたすら安全。
いっぽうオフにすればテールスライドが楽しめ、腕のあるドライバーならクルマを自由に振り回すことができることができるでしょう。
続いて、同じボディでエンジン車(今回はディーゼルエンジン)とモーター駆動車(EV)が選べるBMW「X1」にiceGUARD 7を履いて圧雪路で乗り比べてみました。結論から言えばどちらにもしっかり対応。
EVはアクセルを踏み込むのと同時に大きなトルクが立ちあがるのが特徴ですが、iceGUARD 7はしっかりと大トルクを受け止め、安心して走ることができます。
もちろんディーゼルも同様に高い安定性を実現。同じ銘柄のタイヤで、出力特性が大きく違うEVでもディーゼルでもしっかりと足元を支えてくれることが確認できました。
余談ですが、EVはディーゼル車に対して加速が鋭いだけでなく、アクセルコントロールに対する駆動力制御がよりリニアですし、優れた前後重量バランス&低重心のおかげでハンドリングも素直なのが印象的です。
さらに日産「フェアレディZ」のチューニングカーに超扁平(へんぺい)サイズのiceGUARD 7を履いて圧雪路面でスラロームしてみました。
スタビリティコントロールをオフにしてパワーを掛けるとすぐにテールスライドしますが、そのコントロール性の良さは抜群です。
iceGUARD 7はハイパワーな後輪駆動スポーツカーとのマッチングもよく、なにより運転を楽しめるのがいいですね。
ほかにも、トヨタ「ハイエース」を試乗する機会もありました。
ハイエースは大きくて重い車体のバンですが、iceGUARD SUV G075は適用サイズを展開しています。しかも純正サイズを用意するほか、ドレスアップするユーザー向けのサイズもラインナップ。
今回は4WDモデルに大人3人分の重りを積んだうえで、雪の下が凍った圧雪路にて加速、ハンドリング、そしてブレーキを試してみました。
まず発進加速は、4WDということもあってまったく空転せずにスムーズです。そこからスラロームに移っても、安定性をしっかり保つことを確認できました。もちろんブレーキも、重量の重さによる制動距離の長さこそあるものの、挙動は安定。無謀な運転さえしなければ“何も起きない寛大さ”から、iceGUARD SUV G075の能力の高さを改めて実感しました。
※ ※ ※
一般的な乗用車はもちろん、後輪駆動の高出力スポーツカーからSUV、そしてハイエースまで。今回の試乗ではiceGUARD 7の絶対的な性能と信頼性に加えて、適応能力の高さを知ることができました。
ちなみに“冬の路面での性能”には「氷上性能」と「雪上性能」があり、それらは一部で相反するものです(どちらかを求めるともう一方が低下する部分がある)。
しかしiceGUARD 7はヨコハマの技術により、従来モデルのiceGUARD 6に対して氷上性能が14%向上し、雪上性能も3%向上。トータルで進化しているスタッドレスタイヤなのです。
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。
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