トヨタの「“和製”スーパーカー」! 斬新“3人乗り”仕様&「ハイブリッド」搭載! 全長4.3m級ボディに大排気量「V6」搭載した「アレッサンドロ・ボルタ」とは
今から20年前の2004年にトヨタが発表したハイブリッド・スーパースポーツカーの「アレッサンドロ・ボルタ」。そのデザインや先見性を改めて検証します。
トヨタの「“ハイブリッド”和製スーパーカー」!?
今やスポーツカーもハイブリッド車の時代。フェラーリやランボルギーニなどのスーパーカーメーカーからも、ハイブリッドスーパースポーツが続々と誕生しています。
ところでハイブリッド車といえば、世界初の量産ハイブリッド車「プリウス」を発売したトヨタが思い浮かびます。
現在のトヨタのラインナップを見ると、同社のスポーツモデルの筆頭「GR」を冠する「GRスープラ」「GR86」「GRカローラ」「GRヤリス」に、ハイブリッド車の設定がありません。
しかし、トヨタはなんと20年も前にハイブリッドスポーツカーを発表したことがありました。しかも、デザインをかのジョルジェット・ジウジアーロ氏率いるイタルデザインが担当していました。
そのクルマの名は「アレッサンドロ・ボルタ」。2004年のジュネーブ・ショーに展示されたミッドシップのコンセプトカーで、環境にも優しいスポーツカーのアプローチとして、トヨタとイタルデザインの共同開発によって誕生しました。
イタルデザインがデザインと設計を手がけたボディは、見るからにミッドシップスポーツカーであることを視覚的に訴える流麗なウェッジシェイプ。巨大なリアウイングなどの空力部品が見られないため、外観はとてもクリーンに仕上げられていました。
一方で、後輪には明確なオーバーフェンダーを与え、ボディ後半にボリュームを持たせることで、内在するパワーをさりげなくにじみ出しています。
車体寸法は全長4358mm×全幅1925mm×全高1145mmで、特に横幅が広いですが、これにより車内に3名横並びで座ることが可能に。ドアは、上方に跳ね上がる「シザースドア」を採用。
搭載されるハイブリッドシステムは2代目「ハリアー」に設定されていた「ハリアーハイブリッド」(日本国外ではレクサス「RX400h」)から流用されたTHS-II。
その核となる3.3リッターのV型6気筒「3MZ-FE型」ガソリンエンジンを後輪の前に置き、2基のモーターによって4輪を駆動します。
システム最高出力はハリアーハイブリッドの272psから130psアップの402psを誇り、0-100km/hは4.06秒・最高速度250km/h以上を達成する、と発表されていました。
アレッサンドロ・ボルタは、単にハイブリッドシステムによる高性能を謳う以外にも、ミッドシップスポーツカーに対する新たな可能性も模索していたことも大きな特徴でした。
ミッドシップの4WDでは、エンジンから前輪に駆動力を伝えるプロペラシャフトを伸ばす必要があり、これを覆う大きなセンタートンネルも必須です。しかしハイブリッドシステムなら、車軸を回すモーターとエンジンと切り離せるため、それらはすべて不要。ミッドシップの4WDスポーツカーでありながら、キャビンスペースにフラットなフロアを生み出していました。
また、ミッドシップスポーツカーの多くはくさび形フォルムのため、車体前方に充分なスペースがありません。そこに前輪をステアさせる機械的な装置などを置くため、乗員の足元をさらに狭くしていました。
しかしアレッサンドロ・ボルタでは、アクセル・ブレーキ類からの入力を電気信号で伝達・制御する「バイワイヤ」方式を採り入れ、ステアリング装置・ブレーキ装置の大幅な削減を実現してスペースを拡大。
さらにバイワイヤ技術の恩恵で、なんと一体化したステアリングホイール・ペダル類を左右にスライド移動して、左ハンドル・右ハンドル(センターハンドルも!)を自由に選択することも可能でした。
これに加え、新しいスポーツカー像の象徴として、「静かに走ることもできる」と謳われています。
スポーツカーの多くは排気音が大きいため、市街地や住宅地の走行では気を配る必要がありますが、ハイブリッド車ならモーターだけで走れば騒音を出さないためです。
なお車名のアレッサンドロ・ボルタとは、18世紀に「ボルタ電池」を発明した物理学者「アレッサンドロ・ボルタ」の名前をそのまま用いていました。
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アレッサンドロ・ボルタは、高性能と環境を両立した、まさに未来を予言したスポーツカーでした。
イタルデザインの美しいデザインと独創的な設計と、世界に誇るトヨタのハイブリッド技術が融合という、夢のようなタッグも魅力的です。
アレッサンドロ・ボルタには、今後もスポーツカーが生き残るためにヒントが詰まっているのではないでしょうか。
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。
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