声援や歓声で「罰金5万円!?」なぜ? 大黒埠頭の「違法ドリフト」問題、ギャラリーも罰則あり!? 実態は?
神奈川県にある「大黒ふ頭」。クルマや大型建設用機械などが輸出用に置かれている場所なほか、大黒PAがあることもで知られています。ここでは「違法ドリフト」が問題になっていますが、実はドリフトを見ているギャラリーも罰則の対象となる可能性があるようです。
大黒PAから見えるドリフトは暴走行為助長禁止重点区域!
これまで様々なメディアでは大黒ふ頭周辺での違法ドリフトなどが報じられてきました。
そのなかでドリフトを見るギャラリーに関する問題も度々話題に。実はギャラリーも罰則の対象になるといいますが、どういうことなのでしょうか。
大黒ふ頭のギャラリーの中には大黒PAの施設内から違法ドリフトを見ようとして、フェンスに上ったり、設置された防護フェンスを乗り越えて屋根に上ってみようとしたり。
これらの危険行為をやめさせるために警察と首都高は2023年12月にレンガ風の塀の上に高さ1.2m以上のフェンスを設置しました。
しかし、すぐにフェンスの上から見るギャラリーがおおぜい現れ、何の効果もありませんでした。
その後もパイロンと立入禁止のテープで囲んで防止したり、階段そのものを封鎖して展望広場そのものに上がれないよう封鎖。
それでも新たな対策が講じられるとすぐにそれを突破する輩が出現し、現在も深夜から未明に行われる違法な暴走ドリフトはギャラリーを前にエスカレートしています。
現在では、階段の封鎖は解いたものの、フェンスの周辺はより強固な防護柵で囲まれており、「立ち入り禁止・ルールを守らないと収監されます!」などの、文言が英文でも貼り付けられて立ち入りを強く禁止する警告が出されています。
しかし、ここまでやってもギャラリーの数はまったく減りません。
中には、「行けー!」「もっとやれー!」のように大声で暴走行為をあおる人達もいます。
あおるといっても、もちろんあおり運転のようにクルマであおるわけではありません。
声援を送ったり、うまくドリフトできたときに歓声を上げたりする行為を意味します。
実は、このように違法ドリフトに対して声援を送るなどの行為が、警察の取り締まり対象になるのです。
暴走族には主に二輪車で集団を組み爆音を轟かせながら市街地等で無謀な運転を繰り返す「共同危険型暴走族」。
主に四輪車で運転技術を競うために、港湾地域の道路や山岳道路等で無謀な運転を繰り返す「違法競走型暴走族」の2種類があります。
公道での違法ドリフトは後者の違法競走型暴走族による暴走行為として定義されています。
これらに対してギャラリーが声援を送ることは「暴走行為助長」に相当し、神奈川県警では2003年から2004年に県内5か所を暴走行為助長禁止重点区域に指定しています。
この区域には、警察の暴走族対策で現在はほとんど暴走行為がなくなった地域も含まれています。
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1.金沢地区(横浜市道富岡第42号線など13路線)
2.鶴見地区(横浜市道大黒橋通線など5路線)
3.川崎臨港地区(川崎市道東扇島1号線など7路線)
4.箱根地区(一般国道1号線など2路線)
5.津久井地区(大垂水峠などを含む一般国道20号線)
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大黒ふ頭は2.鶴見地区に含まれており、PAから見える違法ドリフトの場所は横浜ベイブリッジの真下にある交差点近辺となります。
ちなみにここは違法ドリフトへの対策もあり22時から翌6時までは直進のみで右折も左折もUターンも禁止となっています。
さらに知っておきたいのは「指定区間の道路の区域に接する線から30メートル以内の区域」も暴走行為助長禁止重点区域に指定されていることです。
2003年12月に制定された「暴走族等の追放の促進に関する条例」においては、PA内の展望広場から声援などを送る「あおり行為」を行って警官の中止命令に違反した場合は「5万円以下の罰金を科す」と定められています。
この内容について神奈川県警は次のように話しています。
「暴走行為をあおる行為については、県下全域に見られるわけではなく、またギャラリーが行うあおり行為の実態も常に変化しています。
そのため、県下全域に罰則を適用するのではなく、あおり行為の実態や規模などを総合的に判断して、公安委員会が地域住民の生活の安全と平穏を確保する上で必要性の高い区域を『暴走行為助長禁止重点区域』として指定しました。
指定された区域では、県警が中心となって『あおり行為』に対する取締りを強化しています。
集まったギャラリーによる騒音や交通の妨害を排除することで暴走行為を行う暴走族等(ドリフトやローリング族含む)も排除することができ、地域住民の安全と平穏を確保できるという効果が期待できます」
ちなみに暴走行為助長禁止重点区域が指定されているのは神奈川県だけではありません。
神奈川県と同時期となる2003~2004年にかけて暴走族をターゲットにした条例が全国20道府県で制定されており、そのうち16道府県(北海道、宮城県、茨城県、群馬県、栃木県、千葉県、神奈川県、静岡県、愛知県、京都府、岡山県、広島県、香川県、愛媛県、高知県、鹿児島県)で罰則が設けられています。
危険なドリフト見物について、大黒PAを管理する首都高広報課は次のように話してます。
「詳細な理由までは分かりかねますがドリフト行為を見たいがゆえの行為であり、フェンスについても所管の鶴見警察署と調整の上設置しております。
ドリフト行為については、PA外の一般街路で鶴見警察署の所管であり状況改善のためには根本的な原因となっている違法ドリフトへの対応が必要と考えます。
ドリフト行為がなくならない以上状況は改善されないと考えるため、今後も鶴見警察署と調整の上、対策を講じていきたいと考えております」
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最近ではフェンスを乗り越えて屋根に上ってまで見るギャラリーも出現しており、「罰金5万円」以上に重大な転落事故の危険性もあります。
違法ドリフトはもちろん、禁止されている場所での見物も絶対にやめましょう。
Writer: 加藤久美子
山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。