なぜ「月極」は「駐車場」だけに使う?他業種で 「つきぎめ」が用いられない理由は? 最近は減っている?

「月極」はオシャレじゃない? 最近見かけなくなっている背景は?

 ただ、現代では駐車場以外で「月極」の2文字を見ることはほとんどありません。

 むしろ、クレジットカードや銀行口座からの引き落としが普及したことにより、かつてと比べて多種多様なサービスで「月極」を利用することができます。

 にもかかわらず、「月極」という表現があまり見られないのは、漢字の「音読み」と「訓読み」の違いが大きく関係しているようです。

 一般的に、「音読み」は知的かつ難解な印象を与え、「訓読み」は平易かつ幼稚な印象を与えるとされています。

 たとえば、「足跡(そくせき)」と「足跡(あしあと)」が表すものはほぼ同じですが、与える印象には大きな違いがあります。

 明治期以降の日本では「音読み」のほうが格調高く洗練されているとされることが多く、大学進学率が高まった戦後はさらにその傾向が増したと言われています。

 そのようななかでは、訓読みの「月極」よりも「月間契約」や「定期契約」といった表現のほうが好まれたものと考えられます。

駐車場で見られる「月極(つきぎめ)」。それ以外ではあまり耳にすることは無いのはなぜ?
駐車場で見られる「月極(つきぎめ)」。それ以外ではあまり耳にすることは無いのはなぜ?

 また、外来語をそのまま受容できるのも日本語の特徴とされています。

 近年では「マンスリー〇〇」や「サブスク(サブスクリプション)」といったカタカナ語が流通するようになったことも、「月極」という表現が駐車場以外では見られない要因のひとつと言えそうです。

 逆に言えば、いまあえて「月極」という表現を用いる理由がないというのが、最大の理由と言えるかもしれません。

※ ※ ※

 一方、駐車場に関しては、歴史ある表現が長らく残り続けています。

 そこには、多くの不動産業者において駐車場の個別契約自体が副次的な業務であることや、自宅から半径2km以内に駐車場を確保しなければならないという制約があることから、不動産業者間で競争が起こりにくいという背景があります。

 競争が起こらないのであれば、あえて洗練された表現を用いて顧客を引き寄せる必要がないため、結果として「月極」という表現のまま今日に至ったものと考えられます。

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Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明

自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。

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