“約1年”ぶり顔面刷新! 三菱「新型コンパクトSUV」初公開! タフ顔進化の“RVR後継機”「ASX」日本導入は?
2024年4月23日、三菱の欧州法人はコンパクトSUV「ASX」の新たなマイナーチェンジモデルを初公開しました。どのようなモデルなのでしょうか。
三菱新型「ASX」初公開
「なにこれカッコいい!」 欧州にて先日発表された三菱「ASX」の大幅改良モデルを見て、筆者(モータージャーナリスト 工藤 貴宏)は素直にそう感じました。なんといっても顔立ちが端正です。
三菱によるとフロントデザインは「ダイナミックシールド」とのことで、それは国内展開の各車種にも採用している三菱のファミリーフェイスのこと。
しかし、印象は「デリカD:5」や「アウトランダー」はもちろん、昨年登場したばかりの新型「トライトン」など従来のダイナミックシールドとも異なるテイストのように思えます。
このASXは構造の制約上ヘッドライトをバンパー左右ではなく通常の位置に置く必要がある(一般的なダイナミックシールドはヘッドライトをバンパー上部ではなく左右端に埋め込んでいる)のも、純粋なダイナミックシールドからは少し外れて見える理由のひとつでしょう。いずれにせよ精悍で凛々しいデザインです。
ダイナミックシールドとして珍しいポイントはさらにあり、それは左右のヘッドライトに挟まれたグリル部分。一般的なダイナミックシールドはここが水平基調のルーバーが多く、一部車種で網目状となっていますが、ASXではそれらとは異なるボックス状となっているのです。
これは「デリカミニ」と同じ流れといえるのかもしれません(デリカミニはより四角さを強調している)。
正直に白状すると、このASXに関して筆者は大きな勘違いをしていました。Active Sports Crossover(X-over)の略である「ASX」とは日本名「RVR」の輸出仕様の名称。RVRは現時点ではまだ販売がおこなわれている現役モデルです。
だからこの改良モデルも「ASXといえばRVRをベースにした海外仕様」と筆者は考え、「RVRをここまでカッコよく整形したか!」と驚いたのでした。
しかし恥ずかしながら、それは大きな誤解もいいところ。欧州向けのRVRは2023年3月より車体をRVRからルノー「キャプチャー」へとチェンジしていたのです。
つまりこのASXはキャプチャーをベースに三菱オリジナルのフロントデザインを汲みあわせたOEMモデル。生産と開発はルノーが担当し、メカニズムもルノーのものを搭載しています。
新型発売は今年(2024年)6月からとのことなので、従来のデザインはわずか1年3カ月ほどしか販売されなかったことになるのだから驚きですね。
従来モデルがそんな短い期間しか販売されなかったのは自動車界においても異例ですが、従来モデルはキャプチャーとの差別化がグリルとエンブレム程度とわずか。
言葉を選ばずに言うと、あまり手の込んでいないOEMモデルでした。いっぽう新型はグリルだけでなくバンパーやヘッドライトまで専用部品化。今回の改良で「やっと三菱らしいデザインになった」といえるのは間違いありません。
ちなみに写真を見る限りでは、ボンネットフードやフロントフェンダーはキャプチャーと共通の部品としている模様。またリアセクションは、エンブレムや加飾が異なる程度です。
そして実は今回の改良ではエクステリア以外にも興味深い進化があります。それはインフォテイメントシステム。三菱車としてはじめてGoogleプラグインが搭載され、カーナビはGoogleマップを採用。すでに日本でもボルボやホンダが車載していますが、Googleアシスタントによる音声入力でナビやオーディオ、そして空調を操作できるのは興味深いですね。
パワートレインは、1.6リッターガソリンエンジンに2つのモーターを組み合わせたハイブリッド(ルノーのE-TECHフルハイブリッド)、1.3リッターターボエンジンにモーターを組み込んだマイルドハイブリッド、そして1リッターガソリンターボエンジンの合計3タイプを設定。
ディーゼルエンジンが用意されないことを除けば、キャプチャーと同じ展開というわけです。
気になるのは、そんなASXが日本に導入される日が来るのかということ。何を隠そう国内向けのRVRはこの4月に生産を終了し、そのポジションは空席となる可能性が濃厚です。
だからそのポジションへこのASXを輸入販売すればすべてが丸く収まるように思えます。……がそう簡単にはいかなさそう。大きな理由は価格帯です。
ルノーのキャプチャーが日本で337万円から409万円で販売されていることを考えると、ASXも同等の価格帯もしくはそれ以上になってしまうでしょう。
しかしRVRは230万円から用意されていたので価格帯としてASXでは後継モデルになり得ないのです。それどころか車体サイズがひとまわり小さいにもかかわらず価格帯的には「エクリプスクロス」と競合することになるので、日本への導入は難しいところでしょう。
むしろ、インドネシアで生産し各地へ輸出されていくカッコいい新型車「エクスフォース」のほうがサイズ的にもRVRに近くて期待が持てそうに思えなくありません。
しかし、こちらはこちらで先進国での販売を考えた開発がされていないので、法規対応などの面から日本へ輸出するのは難しそうな気配となっています。
というわけで、RVRの後継はASXの輸入でもなく、エクスフォースでもなく、しばらくは空席のままとなりそうです。
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。
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