「タクシー不足」は本当になくなるの? 「ライドシェア」が“一部解禁”ってどういうこと? 何が変わるのか

ライドシェアとは、第一種運転免許、またはタクシードライバー向けなどの第二種運転免許を所有する人が自家用車を使ってタクシーのような旅客行為を行うことを指します。これで、タクシー不足が解消されるのでしょうか。

タクシー不足は本当になくなるの?

 2024年4月8日、テレビやネットで一斉に「日本版ライドシェア解禁」というニュースが流れました。
 
 これで、タクシー不足が解消されるのでしょうか。

タクシー不足は本当になくなるの? 日本型ライドシェア出発式が行われた(撮影:桃田健史)
タクシー不足は本当になくなるの? 日本型ライドシェア出発式が行われた(撮影:桃田健史)

 ライドシェアとは、第一種運転免許、またはタクシードライバー向けなどの第二種運転免許を所有する人が自家用車を使ってタクシーのような旅客行為を行うことを指します。

 また、第一種運転免許所有者が、タクシー事業者が所有する遊休車両を使う場合もあります。
 
 今回、日本版ライドシェアと報じられているのは、法律上の「自家用車活用事業」のこと。

 実用化については、事業者によって法的な解釈の中で独自性があります。

 例えば、東京タクシー・ハイヤー協会による「日本型ライドシェア」では、運転する人は、タクシー事業者がパートタイムで雇用し、タクシー事業者が3ヶ月点検を行います。

 車両は定員5人以上で10人以下、衝突被害軽減ブレーキを装着、通信型ドライブレコーダーを必須としています。

 価格はタクシーと同程度で、事前に目的地を決定して料金はアプリを介しての電子決済。

 保険は、対人8000万円以上、対物200万円以上の任意保険として、整備や運行の責任は基本的にタクシー事業者が負います。

 また、採用については十分な面談、車両の整備状況を確認、座学などでの十分な講習に加えて、アルコールチェッカーなどを含む遠隔点呼なども行い、タクシードライバーと同等の安全対策を講じています。

 ただし、現時点ではライドシェアを実施できる場所は、東京(東京23区・武蔵野市・三鷹市)に限定しての運用となります。

 その他の地域としては、京浜交通圏(横浜市・川崎市・横須賀市ほか)、名古屋交通圏(名古屋市ほか)、そして京都市域交通圏(京都市ほか)が挙げられます。

 東京を含めてライドシェアが可能な時間は、土曜日の深夜や、平日の早朝などと限定されており、さらにライドシェア導入の上限台数も地域によって設定されている状況です。

 これは、タクシーの配車アプリを提供する会社から、タクシーの需要と供給のバランスを示すマッチング率についてのデータを国土交通省が集め、それを分析した結果として設定した結果です。

 さらに4月中には、札幌、仙台、千葉、埼玉県の南部、大阪、神戸、広島、福岡についても配車アプリデータに基づいたタクシー不足台数を公表する予定とのこと。

 その上で、これら地域でライドシェアを実施してみようという事業者が、ライドシェアを始めることになりそうです。

デジタル大臣・河野太郎も出席した「日本型ライドシェア出発式」が行われた(撮影:桃田健史)
デジタル大臣・河野太郎も出席した「日本型ライドシェア出発式」が行われた(撮影:桃田健史)

 こうしたライドシェアを、すでに海外へ旅行や仕事で行った際に体験している人もいるでしょう。

 Uber(ウーバー)、Lyft(リフト)、DIDI(ディディ)、そしてGrab(グラブ)といったライドシェアが国や地域によって実用化されているのです。

 海外におけるこれまでのライドシェアの経緯を振り返ると、アメリカでは2010年代半ば頃から、一般の人にとってタクシーやレンタカーとは違うメジャーな交通手段となり、そうしたトレンドが中国、欧州、東南アジア、インドなどで広がっていきました。

 ただし、国や地域によって、ライドシェアのサービス提供会社、タクシー事業者、ドライバーなどの雇用関係などには違いがある状況です、

 こうした海外ライドシェア体験者で「どうして日本はライドシャアができないのか?」とか、「新しいモビリティの考え方に日本は出遅れているのではないか?」という印象を持った人もいるかもしれません。

 そうした中、日本では国の規制改革数進会議が2023年11月から、日本におけるライドシェア導入のあり方を議論してきたのですが、なんと年末までの2ヶ月弱という短期間で今後の方針に関する中間答申を公開してしまいました。

 実施は、現行の道路運送法における制度(第78条第3号)を調整することで2024年4月を目指すとしたのです。

 そのため、ライドシェア日本導入について反対の姿勢を示したきたタクシー事業者の中でも「生き残るために、なんとかしなければならない」という議論となり、1月にまず、東京ハイヤー・タクシー協会が「『日本型ライドシェア』という考えを公開し、今回の実用化に結びついたという流れです。

 また、道路運送法第78条第2号による、地方部などでの公共交通が不便な「交通空白地」を対象とした、地域住民がボランティアの精神で地域交通を守る「自家用有償旅客運送」についても、その一部を調整することになりました。

 この他、規制改革推進会議の中間答申では、タクシーの規制緩和についても第二種運転免許の地理試験の廃止や、多言語化の対応など様々な規制緩和が盛り込まれ、それらが実現に向かっています。

 これにより、タクシードライバー不足がある程度は解消されることが期待できるでしょう。
 
 そして、大きな注目点は「全面解禁」です。

 規制改革推進会議の中間答申では、いわゆる「ライドシェア新法」の議論を6月目処に行うとしています。

 今回のライドシェア解禁は、タクシー事業者による一般ドライバーの雇用が前提であり、これを「一部解禁」と表現するメディアもあります。

 それが、現行の道路運送法の調整ではなく、さらに大きな法改正、または新たなる法律を規定することで、タクシー事業者以外のライドシェア事業参入を認めることが考えられます。

 この「全面解禁」については、タクシー業界は基本的に反対の姿勢を示しています。

 一方、2025年の大阪・関西万博を控えている大阪府では「全面解禁するべき」という見解を示すなど、事業者と行政の間で意見が分かれている状況です。

 果たして、日本版ライドシェアは今後、どんな進化を遂げるのか、タクシー不足はどう解消されるのか。

 まずは、6月の「全面解禁」に向けた国の動きが気になるところです。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

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