ホンダの「凄いのクルマ」初公開! “サルーン&ミニバン”はどんなクルマ? 「0シリーズ」が目指すものとは
2024年1月、ラスベガスで開催されたCESで世界初公開されたホンダの次世代BEV「ホンダ0」ゼロ)シリーズ」。 同年3月に日本で初公開されました。展示された「サルーン」と「スペースハブ」の独創的なデザインに目がいきがちですが、今回は技術的な部分をBEV商品企画部部長・中野弘二氏に話を伺いました。 一体、どのようなクルマを目指しているのでしょうか。
ホンダの「0シリーズ」とは
2024年1月、ラスベガスで開催されたCESで世界初公開されたホンダの次世代BEV「ホンダ0」ゼロ)シリーズ」。
同年3月に日本で初公開されました。展示された「サルーン」と「スペースハブ」の独創的なデザインに目がいきがちですが、今回は技術的な部分をBEV商品企画部部長・中野弘二氏に話を伺いました。
一体、どのようなクルマを目指しているのでしょうか。
―― ホンダの中でゼロシリーズが生まれた背景は「新たな価値の提供」だと思いますが、その価値とはどのようなモノでしょうか。
中野:まずは「クルマとして楽しめること」と「自動運転技術」です。
この2つは相反する要素に思われがちですが、両側面をしっかりと訴求できるクルマにしたいです。
その上で従来にはない「サービス」や「体験」の提供が重要だと思っています。
―― もう少し具体的に言うと?
中野:その1つは繋がる技術、つまりコネクテッドを活用したSDV(ソフトウェア・ディファインド・ヴィークル)です。
これは今までのような売り切りビジネスではなく、乗っている間に性能アップデートや新しいコンテンツの配信などを含めた、サービスオリエンテッドなクルマにしていきたいと思っています。
これはゼロシリーズとして新たな皮切りにしていきたいと思っています。
―― ちなみに航続距離は300マイル(=480km)と公。トヨタの次世代BEVの1000kmに比べると控えめな印象を受けますが。
中野:我々としてはメインマーケットである北米市場におけるBEVの使い勝手を調査した結果、十分な距離だと認識しています。
―― コンセプトに「軽く」、「薄く」とありましたが、要するにバッテリー搭載量ではなく、クルマ全体で優れた電費を実現させることが、このクルマのミッションだと?
中野:そうですね。業界トップの電費性能と必要十分な航続距離の実現、これが開発で重要視した部分になります。
―― 御社はホンダeの時代から「バッテリーはもっと大事に使うべき」と語っています。ただ、クルマを軽く、薄く作るためにはブレイクスルーも必要だと思います。その辺りはどうでしょうか。
中野:そもそもエネルギー密度ではホンダeよりも向上しています。
更に新しいセルに対してうまくパッケージできるか。ケースを含めて薄型にしていくことに注力しました。
―― ちなみにこのクルマにはエンジンを搭載することは物理的に可能なんでしょうか。今までホンダはプレリュード(2/3代目)やZ(2代目)などで、「ここにエンジン入るの?」と言うような巧みなパッケージを量産化してきた歴史があります。
中野:ゼロシリーズは「BEV専用モデル」と発表していますので、そこは……。
―― ユーザーにとってメリットがあれば、検討する余地はあるかなと思っていますが、シャシ側のブレイクスルーは?
中野:考え方そのものはエンジン車の時代から不変で、やはり「走行エネルギーをミニマムにする」に尽きると思います。
その実現のためには、必要なコンポーネントの小型化や最適配置、衝突対応に付加するウエイトを落とす、空力性能を高めるなど様々あります。
―― つまり、これまでの概念に囚われないモデルですが、技術に関してはホンダが培ってきたDNAがしっかりと受け継がれていると?
中野:その通りです。
ただ、エンジン車とは異なるのは配置自由度。
「必ずここにいなければダメ」と言う概念がないため、これまでよりも挑戦ができたと言うわけです。
―― 走りの部分では「意のままハンドリング」を強調しています。これは従来のホンダ車もそうだったと思いますが、ホンダゼロシリーズでは何が違うのでしょうか?
中野:実は目指す方向性は従来から変わっていません。
ホンダゼロシリーズに採用の「モーションマネージメントシステム」は先日発表された新型アコードにも採用されています。
ホンダゼロシリーズのそれは、モーター駆動であることに加えて、ステアバイワイヤー、ブレーキバイバイワイヤーなどを活かし、より領域が拡大されています。
その結果、いつでも、誰でも、どこでも、思い通りにクルマが動くと言うわけです。
―― キモはどこにあると考えていますか?
中野:ワイド&ローのディメンジョン……つまり基本素性は言うまでもありませんが、それに加えてシャシー制御をどのように統合して活用できるかが重要です。
これはエンジン車でもやっていた事ですが、モーター駆動やステアバイワイヤーなどを活かす事で制御幅をより広がり、結果としてできることも増えます。
更にセンシング技術の進化で前後左右Gのリアルタイム監視が可能となり、理想の姿勢、意のままの姿勢で走ることができます。
お客様の反応が遅れたとしても、クルマ側でうまく補正してくれます。
ただし、とても上手い人にとっては邪魔な制御に感じるかもしれませんが(笑)。
―― このクルマはどのようなユーザーに乗ってもらいたいですか?
中野:なかなか難しい質問ですが(汗)、やはり今ホンダ車オーナーに乗ってもらいたいですね。
走る/曲がる/止まるの部分では「ホンダらしさ」シッカリと再現しながら、時代が求める「環境性能」を高いレベルで両立できていると考えています。
―― 価格は“それなり”になると予想していますが、どのようなポジションのモデルになりそうですか?
中野:当然、ゼロシリーズとして様々なモデルを検討していますが、その中でも「サルーン」はフラッグシップの位置づけです。
※ ※ ※
このように「電動化技術」だけでなく「操る喜び」も次世代に進化させているホンダゼロシリーズ。
そんな中、ホンダは2024年3月15日に「日産自動車と電動化・知能化に向けた戦略的パートナーシップの検討を開始」と発表しました。
その内容は自動車社車載用ソフトウェアプラットフォーム、BEVに関するコアコンポーネント、商品の相互補充など多岐に渡ります。
ホンダゼロシリーズは独自開発なの関連性はないと思いますが、このモデルで培った技術や知見は、将来的に活かされると信じています。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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