かつて人気の「ステーションワゴン」なぜ不人気に? 一時は「大ブーム」も今では“絶滅危惧種”に… 今後「人気再燃」の可能性はあるのか
ステーションワゴンのメリットとは? 今後の復活はありえるのか
ステーションワゴンのメリットとは、荷物をたくさん積めるパッケージングながら、セダン感覚の走りや乗り心地を実現していることにほかなりません。
ステーションワゴンが大ブレイクした当時でも、荷物をたくさん積めるタイプのクルマは存在しました。「ミニバン」や「ワンボックス」、そしてSUVの先輩である「ヨンク」です。
しかし当時のそれらは、重心が高いこともあってセダンに匹敵する走行性能や乗り心地は実現できていませんでした。
また長時間の運転や移動はセダンに比べて、疲労度が大きく違ったのも事実です。積載性の高さと走り&快適性を両立するカテゴリーは、唯一ステーションワゴンだけだったのです。

しかし、昨今は事情が違います。
技術の進歩もあって、ホンダ「オデッセイ」やマツダ「プレマシー」のように(3列目を畳んで)、広い荷室とセダンに近い走りと快適性を両立するミニバンが現れました。
さらに、もっと重心の高いSUVでも、技術の進化とクルマ作りのノウハウの向上によりセダンに匹敵する水準の走りと快適性を両立できるようになったのです。
長時間運転し続けても、セダンに対して明確に疲れるようなことはありません。
いうまでもありませんが、ある程度車体の大きなSUVはステーションワゴンと同様の広いラゲッジスペースを確保しています。そうなるとますます「ステーションワゴンでなければならない理由」が薄まってくるのです。
SUVとステーションワゴンの違いは車高の高さといえますが、昨今は一般的な消費者からすればあえて「低いタイプ」を選ぶ理由が見当たらなくなったといってもいいでしょう。
逆に、乗り降りのしやすさや見晴らしの良さ、そして高い最低地上高より段差を気にしなくていいことなど、ステーションワゴンにはないSUVのメリットも多く存在。そこに魅力が感じる人が増えてきたのです。
それが、ステーションワゴンではなくSUVがここまで支持されるようになった理由と考えられます。
現在、新車販売におけるボディタイプ別シェアでみるとSUVは「もっとも支持されているボディ形状」となりました。
SUVとステーションワゴンを分けるポイントは、実質的に背の高さとタイヤの大きさ程度になったといえます。
すなわち考え方を変えると、今のSUVブームは「形を変えたステーションワゴンブームの復活」といってもいいのではないでしょうか。
いっぽうで、従来のような背が低くコンベンショナルなステーションワゴンの復権はあるのか。
筆者(工藤貴宏)は「ない」と考えます。
一般ユーザーの視点でいえば、ステーションワゴンのメリットは「背の高いクルマに対応していない機械式立体駐車場を利用できる」程度しかありません。
もちろん、それを求める人や、走行感覚を突き詰めてステーションワゴンを選ぶ人もいるでしょう。
実際にはそんな人は多くなく、大多数の人はいちどSUVの便利さを知ってしまうと、再びステーションワゴンに戻ることは考えにくいのではないでしょうか。
その反面、メルセデス・ベンツ、BMW、そしてアウディといったドイツメーカーをはじめ、欧州にはステーションワゴンを複数車種用意するブランドも少なくありません。
しかし、それらのブランドにおいてもかつてに比べると“SUV化”が進んでいるのが現実。
「輸入車のステーションワゴンは日本で多く見かける」と感じている人もいるかもしれませんが、それは国産車でワゴンを選べなくなった人や(SUVを選択せず)こだわりを貫く人が愛用しているケースが多いためで、新車市場における絶対数としてはそう多くはないのです。
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。

























































