トヨタの「スライドドアSUV」!? 全長4.3mのコンパクトボディ! “ミニランクル”感もある「Tjクルーザー」市販化の可能性は?
SUVの人気が続いていますが、そのうちスライドドアを備えたモデルというと案外少ないものです。しかし過去には、トヨタが完成度の高いコンセプトモデル「Tjクルーザー」を発表していました。
完成度の高いコンセプトモデル「Tjクルーザー」とは
いまだに留まるところを知らないクロスオーバーSUV人気。人も荷物も載せやすいボディ形状に、車高が高く見晴らしが良いために運転もしやすいなど、マルチに使えるメリットが多いことで、一度使ったらその便利さに他のボディ形状に乗り換えにくくなるというのもうなずけるところです。
そんな使い勝手の良いクロスオーバーSUVにも、意外にも備わっていない装備が存在しています。それがスライドドアです。
狭い所でも開閉が可能なだけでなく、開口部も広いため、ジュニアシートやチャイルドシートを使用する際も無理なく乗せ降ろしができるなど、多くのメリットがあります。
しかしこのスライドドアを備えたSUVは、オールラウンドミニバンとして知られる三菱「デリカD:5」や、軽自動車のスーパーハイトモデルにSUVテイストをプラスしたモデル程度にしか存在しないのです。
しかし、過去には市販化目前ともいわれた完成度を誇る、スライドドアを備えたSUVのコンセプトモデルが発表されたことがありました。それが、2017年の東京モーターショーでトヨタが発表した「Tjクルーザー」です。
車名のTjクルーザーとは、アクティブに“使い倒せる”TOOL-BOXの「T」と、クルマと様々な場所に出かける楽しさを意味するJoyの「j」に、トヨタのSUVラインアップに伝統的に使われてきた「クルーザー」を加えて力強さを表現したもの。
スクエアでタフさを感じさせるボディデザインと、力強さを感じさせる大径ホイールの組み合わせが印象的な1台です。
無骨なデザインから大き目なボディサイズを想像しますが、実は全長4300mm×全幅1775mm×全高1620mmで、「C-HR」や「ヤリスクロス」と大差ない比較的コンパクトなサイズをしています。
近年はプレーンで角張ったデザインの商用バン「プロボックス」をベースにSUVテイストをプラスするカスタマイズも流行しているため、Tjクルーザーはそのトレンドをいち早く取り入れたモデルといえるかもしれません。
通常時は大人4人がしっかり座ることができる室内空間を確保していますが、助手席側の前後シートは荷室床面と同じレベルでフルフラットにすることが可能で、サーフィンのロングボードなど約3mまでの長尺物を車内に積載できます。
この辺りは同じく助手席側がフルフラットになるホンダの「N-VAN」や、サーフボードを車内に積むことも考慮した「エレメント」などを彷彿とさせるものとなっていました。
当時の発表では、プラットフォームは次世代のTNGAプラットフォームを使用し、パワートレインは2Lクラスのエンジンにハイブリッドシステムをプラスしたもの。そして駆動方式は、前輪駆動および4輪駆動とアナウンスされていました。
なお、ホイールベースは2750mmであり、これらの情報を統合すると現行型のひとつのモデルが浮かび上がります。
それが5代目「プリウス」です。
プラットフォームは50系「プリウス」のものをブラッシュアップさせたTNGAプラットフォームで、搭載エンジンは2Lのハイブリッド。そしてホイールベースの2750mmも合致するのです。
さらに2021年12月に開催された「バッテリーEV戦略に関する説明会」では、「コンパクトクルーザーEV」と呼ばれる初代「ランドクルーザー」や「FJクルーザー」のテイストを盛り込んだバッテリーEVも公開されており、これらはスライドドアこそ備わらないものの、電動化技術を取り入れたSUVモデルであることは間違いありません。
また、先日公開された新型「ランドクルーザー250」の発表会では、さらなるランドクルーザーシリーズの拡充も示唆されました。
すでに発表されている同シリーズとは明らかに異なる2台のSUVのシルエットも現れ、これが「Tjクルーザー市販化につながるモデル、もしくはコンパクトクルーザーEVの市販版ではないか」という憶測も呼んでいます。
そしてトヨタの関連企業であるアイシンは、2022年11月にSUVにも搭載可能な新リンク式パワードアという新たなパワースライドドアシステムを発表しており、2024年の市場投入を目指すとも発表しています。
この時に示されたイメージ画像には、Bピラーの備わらない大開口部のものが使われており、Tjクルーザーが市販される場合は、ピラーレスのより使い勝手の高いスライドドアが採用される可能性もありそうです。
いずれにしても2017年の東京モーターショー以降、現時点では正式な発表は一切ないTjクルーザーですが、当時から完成度の高さは随一だったため、ぜひとも市販化を期待したいところです。
Writer: 小鮒康一
1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。中古車販売店に勤務していた経験も活かし、国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とする。現行車へのチェックも欠かさず活動中。
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