トヨタ「センチュリー」の購入に違法性はあった? 「貴賓車裁判」の結末は? 何が争点だったのか
「貴賓車」はセンチュリーでなければならなかった?
この裁判の争点のひとつとなったのが、「『貴賓車』はセンチュリーでなければならなかったのか」ということです。
原告は県側に対し「購入する車種をセンチュリーとする前提でしか検討しなかった」とし、さらには「『貴賓車』としての品格、安全性についても、最高級車のセンチュリーでなければこれに欠けるとはいえない」と主張しています。
こうした主張に対して、センチュリーを選んだことは合理的と広島高裁が判断したのは前述のとおりですが、その背景には、そもそもセンチュリーが「貴賓車」を目的として開発されたことが大きく関係していると言えそうです。
「貴賓車」には、国内外の要人に対して最大限の礼節を尽くすことで外交および内政上のメリットを得るという大きな目的があるとされています。
そのため「貴賓車」に求められるのは、機能性や快適性、そして品格です。
機能性や快適性に優れたクルマは数多くありますが、それに加えて、「貴賓車」として最も重要な要素のひとつである品格を兼ね備えたクルマというのはそう多くはありません。
というより、センチュリーを除くほとんどすべてのクルマは、そもそも「貴賓車」としての使用を想定していないため、品格についてもセンチュリーほど重きを置いていません。
そう考えると、「『貴賓車』はセンチュリーでなければならなかったのか」という点については議論の余地はないと言えそうです。
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唯一無二の存在となっていたセンチュリーですが、2023年9月には新たなルックスをもった新型センチュリーが登場し、既存のセンチュリー(セダン)とともに、トヨタのフラッグシップモデルとして君臨することになりました。
今後、新型センチュリーとセンチュリー(セダン)のどちらが「貴賓車」としてふさわしいのか、各地で議論が行われることになるのかもしれません。