ミドリの車線…何の意味? 「跨いで良いの?」の声も! 驚きの効果があった設置理由とは

とある自動車道の車線の中に緑色の線が1本引かれています。滅多に見かけることのない線ですが、一体何のために設置されているのでしょうか。

車線の真ん中に緑色の線…これは何?

 日本海沿岸東北自動車道のとある区間には、車線の中に緑色の線が1本引かれています。
 
 滅多に見かけることのない線ですが、一体何のために設置されているのでしょうか。

えっ…! なんで道路の真ん中に緑の車線があるの?(画像引用:国土交通省 東北地方整備局 秋田河川国道事務所)
えっ…! なんで道路の真ん中に緑の車線があるの?(画像引用:国土交通省 東北地方整備局 秋田河川国道事務所)

 東北地方の日本海沿いには、新潟県と青森県を結ぶ日本海沿岸東北自動車道(通称、日東道)が通っています。

 そのうち秋田県内の仁賀保ICから大内JCTまでの区間には、車線のやや右寄りに緑色の線が1本引かれている箇所があります。

 では、この緑色の線は一体何のためにあるのでしょうか。

 そもそも、この緑色の線が引かれている道路は暫定2車線区間です。

 暫定2車線区間とは、4車線以上で計画されていた道路のうち、ひとまず上り線と下り線をそれぞれ1車線ずつ開通した対面通行の道路のことをいいます。

 暫定2車線の高速道路では、道路の中央にラバーポールと呼ばれる比較的柔らかい棒や縁石などを設置して上り線と下り線を区分しているケースが多いです。

 しかし、ラバーポールなどではクルマの対向車線へのはみ出しを防ぐことができず、過去には人が亡くなる重大事故が多く発生していました。

 それを受けて国土交通省では2018年度から、暫定2車線区間でラバーポールの代わりにワイヤーロープの本格設置を進めています。

 ワイヤーロープは高い衝撃緩和性能を持ち、反対車線へのはみ出し事故防止に効果があるほか、人力で簡単に設置できるといったメリットがあります。

 仁賀保ICから大内JCTまでの暫定2車線区間にもワイヤーロープが設置され、設置後はクルマが反対車線に飛び出す事故は起きていません。

 しかし、今度は「ワイヤーロープへの接触事故が多発する」という新たな問題が生じるようになりました。

 そこで、交通工学などを研究する秋田大学の浜岡秀勝教授の助言を受け、ワイヤーロープの接触事故対策として考案されたのが、車線のやや右寄りの部分に緑色の線を引くという方法です。

 この線は「車両誘導線」と呼ばれ、ドライバーが線をまたいで走行することでクルマとワイヤーロープまでの間隔を維持できる仕組みです。

 たとえば右ハンドルのクルマの場合は、車両誘導線が運転席の下に来るように意識して走行するとワイヤーロープとの距離を保つことができます。

 全国でも非常に珍しいこの車両誘導線は、2023年5月に秋田自動車道の鷹巣ICから二井田真中IC間、同年9月に日東道の仁賀保ICから大内JCT間にそれぞれ試行的に導入されました。

 車両誘導線には実線タイプと破線タイプの2種類があり、今後両方の区間で事故防止効果を検証する予定です。

 とはいえ、初めて通行するドライバーがこの車両誘導線を見ても意味が伝わらない可能性があります。

道路脇にクルマの走行位置を示した看板を設置えっ…! なんで道路の真ん中に緑の車線があるの?(画像引用:国土交通省 東北地方整備局 秋田河川国道事務所)
道路脇にクルマの走行位置を示した看板を設置えっ…! なんで道路の真ん中に緑の車線があるの?(画像引用:国土交通省 東北地方整備局 秋田河川国道事務所)

 そのため、道路脇にクルマの走行位置を示した看板を設置するほか、道の駅でチラシを配布するなどしてドライバーに周知を図っています。

 この車両誘導線に関してはSNS上で「事故防止の試みとして画期的だと思う。他の事故多発場所で試行してみては?」という意見や、実際に秋田自動車道を走行したドライバーから「走行位置を意識すると車線の真ん中を走行できるので事故減少効果がありそう」といった好意的な声が寄せられています。

 その一方、「クルマのレーンキープアシストシステム(車線をはみ出しそうになった際に警告・ステアリングの補正をおこなう機能)に影響はないのだろうか」といった不安の声も聞かれました。

※ ※ ※

 秋田県内を走る日東道と秋田自動車道の暫定2車線区間の一部では、ワイヤーロープへの接触事故を防止する取組みとして緑色の車両誘導線を導入しています。今後、どのような検証結果が出るのかが注目されます。

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