ホンダ独自の「センタータンクレイアウト」なぜ小型車だけに搭載? 何がスゴい? 他社が真似できない理由とは

ホンダ独自の技術として「センタータンクレイアウト」があります。軽・小型車に採用されているものですが、どのようなメリットがあるのでしょうか。

ホンダの「センタータンクレイアウト」って一体何?

 自動車メーカーは、各社がさまざまな技術を独自で開発していますが、ホンダの場合「センタータンクレイアウト」がそれに当たるでしょう。
 
 2001年6月に発売された初代「フィット」に初採用されたこのセンタータンクレイアウトとは、どのようなものなのでしょうか。

センタータンクレイアウトによって広い室内を確保したホンダ新型「N-BOX」
センタータンクレイアウトによって広い室内を確保したホンダ新型「N-BOX」

 センタータンクレイアウトは、その名の通り、車両の床下中央に燃料タンクを配置する構造で、ホンダが特許を取得した技術のひとつとして、20年以上にわたって搭載されているものです。

 現在はコンパクトカーのフィット(4代目)はもちろん、SUVの「ヴェゼル」、軽自動車の「N-BOX」「N-WGN」「N-ONE」「N-VAN」に採用されており、2023年秋発売予定の新型N-BOXにも搭載されることになっています。

 車種のラインナップを見ると、センタータンクレイアウトは軽自動車や小型車を中心に搭載されていることがわかります。

 というのも、小さなクルマの場合、快適に過ごすことが出来る空間を少しでも広く確保することが課題となるのですが、限られた空間を最大限に活用するため、通常は後席や荷室の下にある燃料タンクを前席中央の床下に移動することで、空いた空間をさらに有効利用することが可能になるというわけです。

 ホンダの技術者は、センタータンクレイアウトのメリットについて次のようにいいます。

「ホンダの『MM思想(マンマキシマム・メカミニマム)』に基づいて、室内やキャビンを広くすることができます。

 しかも後席のシートアレンジでは、シートを沈み込ませるように前に倒して荷室とつなげてフラットな空間を確保できる『ダイブダウン』や、座面を跳ね上げて『チップアップ』することで背の高い荷物を載せることもできたりします。

 床面が下げられるというメリットが非常に大きく、とくに小型車が恩恵を受けられることからさまざまの車種に使用しています」

 搭載される燃料タンクは両手で抱えられるくらいの大きさで、厚さは15cmほどと薄型。N-BOXの場合、タンク容量が2WDは27リッター、4WDはプロペラシャフトを通す関係から若干少なく、25リッターとしているといい、同じプラットフォームを使うホンダの軽自動車には同様の燃料タンクが床下中央に搭載されています。

 空間を効率的に使用できるのであれば、すべてのホンダ車に搭載すれば良いのではないかと思いますが、そうではないといいます。

 たとえば、ミドルサイズミニバンの「ステップワゴン」はそもそものボディが大きく、燃料タンクを通常のレイアウトで搭載していても広い室内を確保できるため、センタータンクレイアウトを採用していないそうです。

 ちなみに、ホンダの特許技術だったセンタータンクレイアウトですが、現在は特許の期限が切れているとのこと。

 前出の技術者は「他社もやろうと思えば搭載できる」といいますが、燃料タンクの形状やプラットフォーム自体の設計変更にも影響が及び、コスト面などで導入するハードルが高いことからホンダ以外には真似できない技術となっていることが予想されます。

※ ※ ※

 一方で、ホンダ車以外でセンタータンクレイアウトが採用された事例があり、それが、以前販売されていた三菱「i(アイ)」です。

 アイはホンダから技術供与を受けて、センタータンクレイアウトを搭載しています。後部にエンジンを搭載し後輪を駆動するMR(ミッドシップ・リアドライブ)を取り入れていたことが採用した理由と三菱では説明していました。

 また、トヨタがかつて販売していた超小型車「iQ」も、燃料タンクをフラット化し床下へ移動させた方式を採用。

 全長2985mm×全幅1680mm×全高1500mmのコンパクトなボディながらホイールベースは2000mmを確保しており、センタータンクとすることでリアオーバーハングを短縮することが可能になるなど、小さなクルマで大きなメリットを発揮することができるというわけです。

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