トヨタの「斬新SUV」販売は順調?「クラウンクロスオーバー」登場も従来オーナーは様子見か? 新生クラウンの実力は?

トヨタの高級SUV「ハリアー」との違いは?

 クラウンクロスオーバーの1か月平均3784台は果たして多いのか少ないのか、販売店では以下のようにいいます。

「今までクラウンを使ってきたお客さまは、デザインが大幅に変わったことで購入を控えている面があります。また今後登場するスポーツやエステートを見てから、購入の判断をするお客さまもいるようです。

 現在は全店がクラウンクロスオーバーを扱いますが、多く売っているのはトヨタ店、あるいは以前トヨタ店だった店舗です。

 ハリアーと違って、どこの販売店でも堅調に売られるクルマではありません」

4タイプの新型「クラウン」
4タイプの新型「クラウン」

 このコメントにもある通り、クラウンは今のトヨタ車では特殊な商品です。セダンからSUVに変更したことでいわば別のクルマになり、セダンが好きでクラウンに乗ってきたユーザーは戸惑いを感じているのでしょう。

 今後登場するクラウンスポーツ/エステート/セダンを先行披露したのも異例のこと。「4タイプが出そろってからどのクラウンを買うか決めよう」と判断しているユーザーも多いです。

 価格が高い商品ですから、買った後で後悔するのは避けたいため、ほかのクラウンの登場を待っています。

 このほかクラウンはSUVのスタイルでもボディタイプはセダンですから、大きく開く荷室のリアゲートは装着されていません。後席の後部に骨格があってボディ剛性を向上させ、トランクスペースを独立させたため走行安定性や乗り心地、静粛性では有利ですが、荷室の実用性はハリアーやRAV4に劣りします。

 一方、セダンが欲しいユーザーにとっては、クラウンクロスオーバーは全高が1500mmを超えており、外観が個性的です。つまりクラウンクロスオーバーは、SUVでは実用性が乏しく、セダンとしては外観に違和感があり、ユーザーを減らした面があるといえるでしょう。

 また、クラウンクロスオーバーは価格も高めの設定です。全車に4WDと後輪操舵の機能を採用して、走行安定性や小回りの利きを向上させましたが、そのために直列4気筒2.5リッターハイブリッドを搭載する比較的ベーシックなグレードの「クロスオーバーG」でも価格は475万円に達します。

 一方、ハリアーで買い得な2WDの「ハイブリッドG」は、後輪操舵も装着しないために411万9000円です。クラウンクロスオーバーはメカニズムを充実させたことにより、ハリアーに比べると価格が60万円以上高いのです。

 RAV4は内装や装備がシンプルなこともあり、「ハイブリッドG・4WD」が430万4000円です。またRAV4では2リッターエンジン搭載車が充実しており、悪路向けの機能を充実させた「アドベンチャー」は外観もワイルドに仕上げて368万4000円に収まります。

 以上のようにクラウンクロスオーバーは、ハリアーやRAV4に比べると、価格を高める要素が多いです。SUVやセダンとしては機能が少し中途半端に受け取られることも重なり、登録台数はハリアーやRAV4を下まわります。

 クラウンの本当の実力と人気度が分かるのは、スポーツ/エステート/セダンが加わってからでしょう。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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