なぜトヨタは「ヴェルファイア」を残した? 「アルファード一本化」から一変… 幻の「アルファードエアロ仕様」ベースに誕生した背景とは
2023年6月21日に発表されたトヨタ新型「アルファード」と新型「ヴェルファイア」ですが、当初は「アルファード一本化」が既定路線だったと言います。では、なぜ新型ヴェルファイアは存続され、人気が高いアルファードよりも個性の強いモデルとなったのでしょうか。
元々は「アルファード一本化」だったが…なぜヴェルファイアは残ったのか
トヨタ「アルファード」とトヨタ「ヴェルファイア」は、同社を代表する高級ラージミニバンとして販売されているモデルです。
2023年6月に約8年ぶりのフルモデルチェンジを遂げましたが、事前には「ヴェルファイアは廃止されるのではないか」という噂が出ていたものの、それぞれ新型が登場しました。
ヴェルファイアが存続した背景には何があったのでしょうか。
今回のフルモデルチェンジでアルファードは4代目、ヴェルファイアは3代目となりました。
元々歴代モデルでは、ヴェルファイアの人気が高い時期が続いていたものの、先代において2017年に実施された大規模なマイナーチェンジやその後の改良などによってアルファード人気が高まったことで、ここ数年はヴェルファイアの存在感が薄れていました。
実際に先代のモデル末期では、アルファード95%、ヴェルファイア5%という販売比率になっていたこともあり、今回のフルモデルチェンジでは当初「アルファード一本化」が既定路線だったと言います。
しかし、結果として新型アルファード/新型ヴェルファイアはともにフルモデルチェンジ。
発売から約1ヶ月後の販売比率は、新型アルファードが70%、新型ヴェルファイアが30%と計画通りの台数になっていると言います。
このように「アルファード一本化」という既定路線を回避し、30%もの販売比率を占めることになったヴェルファイアには「専用装備」が数多く設定されていることも特徴です。
具体的にはサスペンションやステアリングの専用チューニング、専用剛性パーツの採用、そして2.4リッターターボエンジンの設定など、「走りを意識した」仕様を設定するなどによってアルファードとの差別化を図っているのです。
なぜ新型ヴェルファイアは当初の計画から一変して継続され、さらには専用装備を採用することになったのでしょうか。
新型アルファード/新型ヴェルファイアの開発を担当したCV Company CV製品企画 ZH2 チーフエンジニアの吉岡憲一氏は次のように語ってくれました。
―― 元々「アルファード一本化」が既定路線だったと言いますが、最初はどのような計画だったのでしょうか。
やはり人間は最初から2つの物があると、「どっちがどっち」って迷うと思うんです。
そこで自分がチーフエンジニアになって「あまりあっちこっちやるよりも、1つのものに集中させたほうが絶対良いものができるだろう」と考えました。
また当時の販売台数も95%がアルファードというように、差がついていたこともあったので、「アルファードに1つに専念をしてやっていこう」ということで開発の最初がスタートしました。
これが結果的に良いアルファードが作れたというか。先代ではアルファードに標準/エアロ、ヴェルファイアに標準/エアロと4つの顔があったんです。
しかし新型アルファードでは「ミニバンの王道」を追求していたこともあり、1つになったのがいまのデザインで、まずはひとつの良いクルマを作ることがスタートとなりました。
また同時に色々試行錯誤をして、ベースの王道となるアルファードのエアロ仕様のようなものを作っていました。
―― では、どのような経緯でヴェルファイアが残る事になったのでしょうか。
ミニバンの王道を追求するなど試行錯誤しているうちに、豊田章男社長(当時)から「ヴェルファイアっていう名前が好きで買っていただいているお客さまもいる、そういうお客様の気持ちをもう少し考えてみたら」と軽い感じで言われました。
それでヴェルファイアの色々なお客さまに話を聞いたり、ディーラーに行って「なぜヴェルファイアはこんなに少なくなっちゃったの」という話も聞きに行きました。
話を聞いている中で、やはりヴェルファイアのお客さまは少しアグレッシブ/スポーティな好みということが分かり、良いものとなった新型アルファードをベースにして「もう少し尖ったやつを作れないか」ということで、エアロ仕様を進化させたのが新型ヴェルファイアです。
※ ※ ※
このような経緯で存続することになったヴェルファイアですが、なぜ新型では「走りを意識」した仕様が存在するのでしょうか。
買う人も造る側も金持ちだから