クルマ好きは見栄張りがち? 「排気量マウント」ってナニ? 過去には“見栄っ張りカスタム”流行も? 現在では変わりつつある意味合いとは

排気量によって税額が変わる自動車税の時期となる5月などには「排気量マウント」という言葉が聞かれることがあります。一般的に排気量マウントとはどのような事象を指すのでしょうか。考察します。

「排気量マウント」ってどんな文化? 何故生まれた?

 排気量によって税額が変わる自動車税支払いの時期となる5月などには「排気量マウント」という言葉が聞かれることがあります。実際今年(2023年)でもツイッターのトレンドに“排気量マウント”が入るほどです。
 
 一般的にクルマにおける排気量マウントとはどのような事象を指すのでしょうか。また排気量が高いということにどのような意味があるのでしょうか。

ちょっと前のクルマには、エンジンやリアバッジに排気量を記載する例も多く見られた
ちょっと前のクルマには、エンジンやリアバッジに排気量を記載する例も多く見られた

 もともと排気量マウントと呼ばれる現象は2輪車乗りの間で発生したと言われています。というのも一度免許を取得してしまえば排気量問わずに乗ることができるクルマとは異なり、バイクは原付から始まり、125ccまで運転可能な普通自動二輪小型限定、400ccまで運転可能な普通自動二輪、そしてすべての排気量のバイクが運転できる大型自動二輪と細分化されているというのが大きな理由でしょう(そのほかAT限定もあり)。

 今でこそ教習所に通えば比較的だれでも取得できる大型自動二輪免許ですが、1975年に中型限定自動二輪免許が追加され、現代の区分に変わる1995年までの間は、中型以上のバイクに乗るためには「限定解除」と呼ばれる実技試験をパスしなければならない時代があったのです。

 この実技試験は運転免許試験場で実施され、教習所に通っていれば免除されるものとは異なり、非常に難易度の高いものとなっていました。

 そのため、排気量の大きなバイクに乗っている=難関の限定解除をパスした凄腕ライダーという自負もあり、小排気量のバイクを見下すという図式が生まれたと言われています。

 つまり、排気量マウントというよりは「免許マウント」というものだったというワケですね。

 では免許の種類によって運転できる車両の排気量に差がないクルマ界隈では排気量マウントがないのか、というとそうでもありません。

 近年では少なくなってきましたが、以前は同じ車種であってもグレードによって搭載されるエンジンの排気量が違うことは珍しくなく、上級グレードは直列6気筒の3.0リッターエンジンなのに、最も安価なグレードでは直列4気筒の1.8リッターエンジンだった、なんて車種も存在していたのです。

 また当然ながら排気量の大きな車種は高級車が中心だったこともあり、排気量の大きなクルマに乗っている=裕福な人ということで、クルマについても排気量マウントは存在していたと言えるでしょう。

 もちろん本人が気に入って乗っているクルマであるのなら、排気量の大小などは関係ない部分ではあります。

 しかし自動車税がエンジンの排気量によって金額が変わるようになって以降は、2.0リッター以下のエンジンを搭載しているモデルであるにもかかわらず、わざと5ナンバー枠を超えるようなモールやバンパーを装着し、わざわざ記載変更手続きを経て3ナンバー登録にする見栄っ張りカスタムが流行した時期もあり、やはり排気量が大きい方がエライと感じる人は少なくなかったのかもしれません。

 とはいえ、今では環境への負荷も考えて小排気量化したダウンサイジングターボとしたり、そこにさらにモーターをプラスして大排気量車に匹敵する出力を得ることも難しくなくなってきた時代となっており、あのメルセデス・ベンツの高級セダン「Eクラス」でさえ1.5リッターエンジン搭載車をラインナップするほど。

 またそもそも排気量という概念が存在しない電気自動車も普及し始めているので、排気量マウントという言葉自体が過去のものとなるのも、そう遠くない未来の出来事かもしれません。

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Writer: 小鮒康一

1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。中古車販売店に勤務していた経験も活かし、国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とする。現行車へのチェックも欠かさず活動中。

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