「車で冠水路を走行」なぜ危険? 「知らなかった」じゃ済まされない! クルマ水没で起こる最悪の事態とは
昨今、大雨によって道路が冠水し、各地で被害が出ていますが、冠水路をクルマで走行する様子がニュースなどで報じられています。クルマが水のなかを走行すると、どうなるのでしょうか。
冠水路でエンジン停止するとホントにヤバい!
ここ最近、線状降水帯やゲリラ豪雨が発生して、各地で雨による甚大な被害が出ています。
そんななか、冠水した道をクルマが水しぶきをあげながら走っている光景をニュースなどで見かけますが、「あれは大丈夫なのか?」と気になっている人も多いでしょう。
冠水路をクルマで走行すると、どのような影響があるのでしょうか。
クルマは雨に強い乗り物ですが、一定ラインを超えた冠水路を走行した場合は悪影響が考えられます。
JAF(一般社団法人 日本自動車連盟)が2010年におこなったテストでは、水深おおよそ「30cm」までなら走行は可能という結果になりました。
JAFのテストでは、水深30cmと60cmをテスト条件として、セダンのトヨタ「マークII」とSUVの日産「エクストレイル」でそれぞれ冠水走行試験を実施。
その結果、セダンのマークIIは水深30cmでは走行可能だったものの、水深60cmは走行不可となり、SUVのエクストレイルは水深30cm・60cmともに走行可能だったという検証結果が発表されています。
両者の大きな違いは、エンジンの設置位置の高さです。セダンのマークIIは車高が低く設定されている一方、SUVのエクストレイルは車高が高く、多少のぬかるみや段差なども走行することが可能。この車高の違いにより、走行できる水深が変わってくるというわけです。
走行不可になる理由は、水が入り込むことでエンジンがダメになってしまうからです。
ガソリン車やディーゼル車の場合、マフラーに浸水してしまうとエンジン内部にも水が入って停止してしまいます。
ドア付近まで冠水すると、燃料と空気の混合気を作るためにエンジン内に空気を取り入れるエアクリーナーなどが水につかってしまい、自然吸気ができなくなってエンジンが止まるのです。
さらに、電気系統が水によってショートすることがあり、現在のほとんどのクルマが採用するパワーウィンドウを開閉させるモーターも動かなくなってしまいます。
このような状況になると、窓を割るか自力でドアを開ける方法しか残っておらず非常に危険なのです。
ところで、JAFでも検証された「水深30cm」ですが、それほど深くないと考える人もいるでしょう。
実際には、セダンで水深30cmの冠水路に進入してしまい、運転席のドアを開けようとすると、成人男性が力を入れてドアを押してやっと開けることができる状態になります。女性や子供の場合は不可能に近いといえます。
以前筆者(藤本敬太)は、京都市市民防災センターで「アンダーパスでの危険性」というシミュレーションを体験したことがあるのですが、水深30cmで何とかドアを開けることができたものの、水深40cmになると正直厳しい状況でした。
冠水路を走行して水かさが増してしまうとエンジンがダメになって電気で開閉できる窓が開かなくなり、水かさが増すとドアを開けて脱出することが困難になることから、冠水路には決して進入せず、安全な道へ迂回すべきだといえます。
もしエンジンが停止しなかったとしても、水が車内に入り込むと厄介な事態に陥ります。
クルマへの悪影響としては、臭いが染みつくことがあり、フロアの下部にある断熱材やクッション材(スポンジ材)まで水に浸かってしまうと臭いが除去できません。
その後、目に見えないところからカビが発生して、車内空間が劣悪な環境になります。少しの床下浸水でもカビ発生の原因に繋がるので注意が必要です。
そして、車内が浸水したクルマは、査定価値も下落。オークションなどで取引するときは「水没車」又は「冠水車」として表示されて取引価格が大幅に下がってしまうのです。
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道路が低くなっているアンダーパスはあっという間に冠水してしまいますし、あまりにも激しい雨が降ったり河川が氾濫するような事態では、普段通っている道が冠水してしまうこともあります。
冠水した道路を走行するとエンジンが停止して身動きが取れなくなってしまうほか、側溝にはまったり障害物などにぶつかってしまったりすることも起こりえます。
クルマで冠水路を無理やり突破するのではなく、可能な限り迂回するといった命を守る行動を心掛けることが、クルマへの被害を減らすことにもつながるといえそうです。
諸元表に冠水走行可能な水深も加えて欲しいかな。
とはいえ、メーカーが推奨できる水深をわざわざ書くと安心して水をかき分けて走る人も出てくるか。
スペック上の最低地上高を目安にしたほうが無難だと思うけど。