全長5m超え!? トヨタ新型「クラウン セダン」はもう「いつかはクラウン」なクルマじゃない? “ビッグな王道セダン”は“誰”向けなのか

4つのボディタイプに分裂したトヨタ「クラウン」には、きちんと伝統の「セダン」も用意されています。しかし、ボディサイズは全長5mを超え、全幅も拡大。パワートレインもFCVまで用意されるなど、位置づけは大きく変わったようにも思えます。

新型「クラウンセダン」は純粋なショーファーカーへ?

 トヨタ新型「クラウン」はこれまでとは異なり4つのタイプに分裂するなど、大きく変わりました。
 
 初代モデルは日本で初めて国産技術だけで作られたことでも知られており、初代が登場してから68年という長い歴史を持つ、日本を代表するセダンです。

全長5mを超える巨大ボディ…トヨタ新型「クラウン セダン」
全長5mを超える巨大ボディ…トヨタ新型「クラウン セダン」

 2022年秋に登場した16世代目はまず、リフトアップしたボディに大径タイヤを組み合わせ、セダンとSUVの2つのジャンルを混合させた「クロスオーバー」からデビュー。

 大胆な変化がもたらされ、クラウンの固定概念を打ち破ったそのスタイリングにも驚きましたが、それまでのエンジン縦置きの後輪駆動(FR)からエンジン縦置きのFFベースの4WDへと変化したドライブトレインなど、クルマ自体の作りの変化にも衝撃を受けました。

 しかし、16代目の“クラウンシリーズ”はそれだけではありません。

 発売済みのクロスオーバーに加え、SUVの「スポーツ」や「エステート」、そしてSUVテイストではない純粋なサルーンの「セダン」が登場することが予告されており、合計4つのボディでシリーズを構成するのです。

 なかには今後発売予定の「セダン」の存在を知って、コンベンショナルなセダンがあることに安心した人もいることでしょう。

「クロスオーバー」のアバンギャルドなデザインは新しい時代を感じさせるものですが、従来のクラウンを乗り継いできた人のなかには「飛躍しすぎ」と感じた人も少なくないかもしれません。

 いっぽうで「セダン」のデザインはクロスオーバーほど冒険していない、コンサバティブなもの。保守的なユーザーにとっても受け入れられるスタイルではないでしょうか。

 ただ、そんな16代目クラウンシリーズの「セダン」ですが、これまでのクラウンと同じ感覚と考えていると、少し違うかもしれません。

 その最大の理由は車体サイズです。

 先代クラウン(15代目)の車体サイズは全長4910mm×全幅1800mmだったのに対し、新型クラウンセダンは全長5030mm×全幅1890mmとひとまわり大きくなるのです。

 全長はなんと5mをオーバー。全長プラス120mm×全幅プラス90mmという拡大幅は大きく、従来モデルからの買い替えを考えるのであれば、まずは自宅車庫のサイズを心配しないといけません。

 これまでクラウンを愛用していた一般ユーザーの多くは、このサイズアップは辛いと感じる人が多いのではないでしょうか。また、価格帯が上昇するのも間違いないでしょう。

 では、新しいクラウンセダンはどんな人へ訴求するモデルなのでしょうか。

 まずターゲットとなるのは、法人が社用車としたり官公庁や自治体が公用車として導入するケースです。

 いわゆるショーファー(運転は運転手に任せ、オーナーは後席に座る用途)のニーズは車両にも格調が求められ、カジュアルなクラウンクロスオーバーは相応しいとは言えません。

 また、同じショーファーカーでも、あまりにも高価なレクサス「LS」やトヨタ「センチュリー」ではなく「やはりクラウン」というニーズは根強くあります。クラウンセダンはそういった使い方とマッチングがいいというわけです。

 新しいクラウンセダンのパワーユニットはハイブリッドのほか燃料電池車(FCV)が用意することがアナウンスされました。燃料電池車の設定は官公庁や自治体へ収めることを強く意識しているのは明らかです。

 クラウンは元来、ショーファーニーズの強いクルマです。セダンはそういった人たちのためのクルマと考えると、立ち位置を理解しやすいでしょう。

 そしてもちろん、東京などで多く見かける個人タクシーにも多く使われるであろうことも想像に難くありません。

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Writer: 工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。

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