トヨタの「スポーツBEV」は出ないの? 黄金モデルはどうなった? 最優先は「運転が楽しい」 GRの目指す「BEV」とは
トヨタのクルマづくり… 「社長とマスタードライバー」を振り返る
また前述の欧州メディア懇談では、トヨタの社長を14年間続けたことやマスタードライバーとしてのクルマづくりについても語っていました。
―― 14年間の社長在任、どうでしたか?
豊田:長い時間続けると思わなかったですが、結果として“商品”を開発できる会社に改革できたと思います。
私は就任して「街一番の会社」、「もっといいクルマをつくろう」の二つだけ言いました。
周りからは馬鹿にされましたが、私がその答えを言ったら、今のようなトヨタになってなかったと思います。
ですから、これから出す商品にご期待ください。私は会長になりますが、「マスタードライバー」の役目は残ります。
商品に足して色々口を出しますが、それが「邪魔なのか?」、「助けになるのか?」、これから出る商品を見て判断いただければと思います。
―― マスタードライバーを志した理由は?
豊田:私はエンジニアではありません。
そんな私が37万人を率いて商品経営ができるのか、それが出発点でした。
まず「クルマの運転」と「クルマのデザインはどうあるべきか」について、自分自身の時間を使って学びました。
そこで得た“物差し”を元にクルマと会話を行なっています。
では、マスタードライバーをいつまで続けるのか。
それは年齢ではありません。私は当社のテストドライバー、ジェントルマンドライバー、そしてプロドライバーと一緒にレースに出場しています。
彼らとの約束は「タイム差が10秒以上になったらやめます」と。
デモランを行なった水素GRカローラは参戦当初(2年前)5秒の差がありましたが、今は1秒以下。なので、やめる時期はちょっと遠のいています(笑)。
そして、最後の質問では何と豊田会長のサプライズ発言がありました。
―― モータースポーツへの想いは強いですが、いつまで続けますか?
豊田:まだまだやりたいと思っています。私のレースの原点はニュル(ニュルブルクリンク)です。
ただ、これまでのニュルでの思い出は「運転の仕方も解らずビビりながら走っていた」と言う記憶しかありません。
ただ、今は日本やアジアで鍛えたスキルを活かし、もう一度ニュルと語ってみたいと思いました。ここでお約束しますが、来年のニュル……24時間かどうかは解りませんが、どこかのレースに参戦します。
私もこのような了承は会社では取り辛く、公の場で言うと出ざるを得ない状況になるので(笑)、是非とも後押しをお願いしたいと思います。
※ ※ ※
ちなみにどんなマシンで参戦するのでしょうか。懇談の後にコッソリ聞いてみました。
現時点で、GRヤリス/GRカローラはニュルでの確認はしていないようですが、それに対して豊田氏は「センチュリーやクラウンではないのは間違いなし(笑)。レクサスはちょっと重いのがネック、やはりやるならGRモデルでしょうね。ただ、まだ発表するには早すぎ!」と語っていました。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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