やっぱホンダは「F1」でしょ! 2026年復帰参戦へ至る意外な「きっかけ」とは
2023年5月24日、ホンダは2026年シーズンからのF1復帰参戦を明らかにしました。PUサプライヤーとしてホンダが改めて参戦へと至った経緯について、自動車評論家の国沢光宏氏が解説します。
ホンダが「F1」復帰を正式に発表!
ホンダは2023年5月24日、2026年シーズンから自動車レースの最高峰「FIAフォーミュラ・ワン世界選手権(以下、F1)」に復帰することを明らかにしました。
英国の自動車メーカー「アストンマーティン」のF1チームに対し、エンジンなどのPU(パワーユニット)を供給する「パワーユニットサプライヤー」での参戦だといいますが、今回の復帰に至るまで、ホンダの中でどのような経緯があったのでしょうか。
嬉しいことに、ホンダが2026年からF1に戻ってくることになった。
様々なルートから取材してみたところ「ホンダのDNAはF1でしょう!」という、HRC(ホンダ・レーシング)渡辺 康治社長の奔走と、ホンダの青山 真二副社長の強い意思によって実現したプロジェクトだという。
最近ホンダのブランドイメージ力は落ちる一方と言われる中、明るい希望も見えてきた。
以下、復活に至った経緯を紹介したい。
直近のF1活動から振り返ってみると、現在の「第4期」と呼ばれるF1参戦は2013年に始まった。
マクラーレンと組んだのだけれど、ホンダ側の体勢がひどく、当初からトラブル続き。技術力というより明らかにマネージメントに問題を抱えていたと思う。
2016年よりF1の担当が山本 雅史氏に変わり、パートナーもトロロッソ(現在はアルファタウリ)へ変更。
すると2017年から徐々に本来の強さが戻ってくる。
2019年より、レッドブルにもパワーユニット供給を開始。2021年はメルセデスを圧倒し、フェルスタッペンがチャンピオン奪取!
2022年から名前こそ「レッドブルパワートレインズ」となったものの、今に至るまでホンダ製のパワーユニットはメルセデスやフェラーリより優れていると高く評価されている。
それだけに「2021年を持って撤退する」という、2020年当時の社長だった八郷 隆弘さんの判断は、誰が見ても間違いだったと思う。
結果的に撤退を決めたため、イギリスの拠点など整理し、巨額の損失を出す。
レッドブル側にとってもパワーユニット部門を立ち上げるため、少なからぬ手間が必要になる。撤退せず活動を存続させていたら、ホンダもレッドブルもお互いに無駄遣いをせずに済んだ。
とはいえ、日本側の開発拠点である「さくら」(HRCの開発拠点「HRC Sakura」)は、2025年までパワーユニット供給を継続するため稼働中。再開するなら早い時期に次のパートナーを探さなければならない。
もしさくらも解散したら、もはやF1再開には莫大な費用と人材の育成が必要になってくる。
HRCの渡辺社長は青山副社長のバックアップのもと、2022年頃から本格的な再開へ向けての作戦を練っていたようだ。
ただし当初、ホンダの三部 敏宏社長は活動再開を渋っていたと聞く。八郷前社長の判断をくつがえすことだって出来たのに、電動化を推進すると強く主張して再開認めず。
そうした中、5月24日におこなわれた記者会見で三部社長は「2026年からF1もカーボンニュートラルを目指すため意義がある」とコメントしたけれど、そんなことは2020年時点で容易に予想できていたこと。
F1を主催する欧州はカーボンニュートラルの発信地であり、当然の流れです。
撤退という判断をした時点で、メディアからも「F1はカーボンニュートラルになるから残れ」という話がたくさん出ていたほど。だからこそ、ドイツ勢などもカムバックする。
もしそうなることを読めなかったのなら、ホンダの調査能力の低さを露呈するようなもの。とにかく三部社長はF1再開の気持ちはなかったし、一方で渡辺さんと青山さんは、F1こそホンダの根っ子だと思っていた。
関係筋から聞いたところによれば、三部社長が参戦再開に合意した大きな理由は「ホンダにとって最も大切なアメリカ市場でF1人気になっているから」のようだ。実際に会見でも同様のコメントをしている。
意外なことに、アメリカのブランドイメージを調べてみたら、インディもさることながらF1が大きいと判明。F1参戦を止めたらあっという間に存在感が薄れると説得され、ついに再開へGOを出したという流れかもしれない。
ちなみに2026年からパートナーになるアストンマーティン(アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ・ワン・チーム)は、ジョーダングランプリからスタートした。
1998年から2002年までホンダエンジンを使っており(3年間は無限ホンダ)、その時のコネクションなど残っていたのだろう。
フォースインディアになってから厳しい戦績だったものの、資産家のローレンス・ストロール氏(現・チーム会長)がオーナーになるや、急速にチーム体勢は整っていく。
2022年にレッドブルの空力担当を引き抜くや、速さもしっかり出てきた。
2023年シーズンの実力ときたら、時にメルセデスや(アストンマーティンもメルセデスのパワーユニットを使用する)フェラーリを凌ぐ戦績を納めているほど。
さすがにメルセデスのカスタマー仕様だとこれ以上無理、というレベル。ホンダのパワーユニットなら十分TOPを狙えるだろう。
筆者(国沢光宏)にとっても、やっぱり「ホンダはF1」だ! 嬉しいニュースです。
[編集部注記:2023年5月24日13時15分、記載の一部に誤りがあったため修正しました]
Writer: 国沢光宏
Yahooで検索すると最初に出てくる自動車評論家。新車レポートから上手な維持管理の方法まで、自動車関連を全てカバー。ベストカー、カートップ、エンジンなど自動車雑誌への寄稿や、ネットメディアを中心に活動をしている。2010年タイ国ラリー選手権シリーズチャンピオン。
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