「客のタイヤにわざと穴…」なぜ? 1本パンクで4本新品「タイヤ保証」で不正か 中古車販売店の内情とは

中古車販売店がお客のクルマに装着されているタイヤをわざとパンクさせる行為が話題となっています。どのような事情からそのような行為に至ったのでしょうか。

1本パンクで4本新品「タイヤ保証」とは?

 中古車の整備・販売を行う「ビッグモーター」では、度々不正行為が行われていたと報道されています。
 
 その中で「ユーザーのクルマのタイヤに穴を空ける」という行為が話題となっていますが、その実態とはどのようなものなのでしょうか。

保険会社にばれないよう穴を空ける方法を指南する動画のスクリーンショット(画像:元社員より提供)
保険会社にばれないよう穴を空ける方法を指南する動画のスクリーンショット(画像:元社員より提供)

 かつてビッグモーターでは、同社で中古車を購入したり、車検を受けたりしたお客に対して「タイヤ保証」というサービスを提供していました。

 契約期間は2年間で、期間内にタイヤがパンクした場合、ユーザーは工賃のみの負担で同レベルの新品タイヤに4本とも交換できる、という保証サービスです。

 請求の方法はパンクした箇所の写真を撮って保険会社に申請し、保険会社が認めればタイヤ4本分を注文し、ビッグモーター店舗で交換が行なわれます。

 そして保険会社からタイヤ4本分の代金(原価ベース)がビッグモーターに入金されるという仕組みです。

 後述しますが、この保証サービスを悪用しパンクしていないタイヤにわざわざ穴を空けてパンクさせ、タイヤ4本分の保険金(普通車上限10万円、軽自動車5万円※原価ベース)を不正に取得することがビッグモーターの元社員による告発で明らかになりました。

 さらには、報道によって保険会社にばれないよう穴を空ける方法を指南する動画の存在も明らかになっています。

 実際にパンクしたタイヤよりも高級なタイヤがパンクしたことにして保険金を請求し、お客のクルマには新品の安いタイヤを装着しその差額を店の売り上げに計上していたこともあったといいます。

 さらに、お客の所有ではない車検切れのクルマや廃車予定のクルマのタイヤを使って「架空請求」していた例もありました。

 タイヤ保証サービスを展開していたのは、ゼアーウィンスリーサービスという会社です。

 公式サイトの情報によると2016年からタイヤ保証サービスを開始。2023年3月9日現在の登録顧客数は248万6601件となっています。

 導入例として紹介されている企業は国産新車ディーラーや、中古車販売業者、タイヤ販売業者などが名を連ねており、そこにはビッグモーターの名前も未だ残っています(ビッグモーターにおいては、タイヤ保証サービスを悪用した保険金不正請求が発覚したことで、現在は廃止)。

 そもそも「タイヤ保証サービス」とはどのような保証なのでしょうか。西日本のビッグモーターで営業を担当していた元社員にまずはその加入方法から聞いてみました。

「タイヤ保証は当時加入出来るタイミングとして2系統(『1.車両販売時に加入/営業側で販売時のパックメニューに含まれる』『2.車検受注時コースに含まれる』)がありました。

 コースは、『基本コース』『低燃費コース』『安心コース』となり、1と2のパターンで保証を付けるため、タイヤ保証は単体で加入する保険ではありませんでした。

 普通車10万円(卸価格)、軽自動車5万円(同)を上限として、タイヤ1本がパンクしてもそれを含めて全4本が新品タイヤになる(期間中1回のみ)、という保証です。

 お客の負担は工賃のみでタイヤ交換工賃は、保証使用時は通常1500円の倍額となり1本3000円でした。

 タイヤ保証が付帯されるコース車検を選択してもらうことが車検単価を上げる簡単な方法なので、タイヤ保証を使用する前提でタイヤ劣化の進んだお客を勧誘していた節がありました」

※ ※ ※

 補足すると、「タイヤ保証のついたコース車検を選べば、後日、タイヤをわざとパンクさせて保険金を請求できるので劣化したタイヤが4本とも新品になります」という誘い文句で単価の高い「コース車検」を選ばせていた、ということになります。

 なお、タイヤ保証サービスについては運用方法などがコロコロ変わっており、他の店舗からの情報では一時期「1万円」の保険料を払ってパックではなく単独で保証を付けられたこともあったとのことです。

【画像】これが「タイヤの穴あけ行為」 わざと穴を空けている様子を見る!(20枚)

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