トヨタが「幼児置き去り」の防止に取り組む! 「開発は早急に…」製品化の経緯は? 日産も順次展開で「事故減少」に貢献へ
開発者に思いを聞いた!警報はモールス信号の「SOS」と同じ?
最近では、送迎用バスに置き去りにされた幼児が亡くなるという報道が相次いでいましたが、トヨタによる開発はこのような事故を無くすために、ガイドラインが出るよりも前である2022年9月頃からスタートしたといいます。
その後、今回の製品発表時にトヨタは「車内に置き去りにされた幼児が犠牲になるという大変痛ましい事故を一件でも防ぎたいという思いから、本商品の開発を進めてきました」と述べています。
では、どのような形で開発が進められたのでしょうか。カスタマーファースト推進本部 サービス部 市場品質室 車両1グループ グループ長 久保寺直樹氏に話を伺いました。
―― まず気になったのが警報音の鳴り方です。外部警報はかなり大きな音(94.3から104.3dB)でさらに独特の音パターンでした。独特の音パターンですね?
警報の鳴り方はモールス信号の『SOS』と同様のパターン『・・・―――・・・』にしています。
警報の音自体はクルマについているホーンの音を使うため、盗難防止装置などが作動した時の音と間違えられないように音パターンを変えました。
警報音が鳴っていることに周囲の人々が気づいたとしても、『またどこかで盗難防止装置の警告音が鳴っている。誤作動かな?』と思われて、車内置き去りを知らせる警報とはわかってもらえないことを懸念したからです。
周囲の人々に異常であることを即座にわかってもらうために、音はクルマのホーンと同じでも鳴り方を独特なパターンにしています。
―― 開発で苦労した点はどこでしょうか?
いかに早く仕様を決めて市販するか、というところです。
本来は2022年12月に国交省のガイドラインが出てからのスタートすべきだったのかもしれませんが、一刻も早く完成させるために2022年9月、牧之原の死亡事故が起こった翌日から開発をスタートさせました。
―― 他の置き去り防止装置にない特徴は?
『ここだよボタン』ですね。ガイドラインの条件にはない装置ですが、万が一の運行スタッフのヒューマンエラーが起こりうることを考えて、お子さん自らが警報装置を作動できるようにしました。
もちろん、走行中などにお子さんがいたずらで押したとしても鳴らない仕様となっています。
また、園バスとしての使用に差し支えないよう最寄りのトヨタディーラーで短時間で取付が可能なことも特徴です。
―― 『ここだよボタン』は幼い子どもでも押せるのでしょうか?
はい。実際に幼稚園に協力を頂いて、3歳から5歳のお子さんが状況を理解して実際に押せるかどうか、のテストも時間をかけて行いました。幼稚園の年少さんでも押せることが確認されました。
―― ハイエースとコースターとの価格の違いは何でしょうか?
システムは同じですが、ハイエースとコースターとではクルマのサイズが異なるため、必要なケーブルの長さも変わってきます。主な理由は装備するための部品の量の違いです。
価格は以下の通りで当初予定されていた価格(10万円前後)の通りとなる「ハイエース(幼児バス)2004年8月以降:8万8000円」、「コースター(幼児専用車)2004年7月以降:11万円」に取付工賃(3万円から5万円販売店や車種によって異なる)などがかかります。
最寄りのディーラーで2時間から3時間前後という短時間での取り付けができ、また他社の製品では大半が取り付けから1年間の保証であるのに対してトヨタ純正用品として3年間6万キロという長い保証が付けられていることが特徴です。
なお、事業者の負担を減らすため設置に関してはガイドラインへの適合が確認された製品を対象に補助金が出されます。
幼稚園や認定こども園など装備が義務付けられる施設では1台あたり17万5000円、認可外保育園など義務付けられない施設では1台あたり8万8000円の方針です。
毎年5月に入ると外気温が25度以上になる日も増え、車内の温度は想定外に早く危険な温度に達するケースもあります。
幼稚園バスだけではなく、家庭のクルマにおいても子どもの置き去りはたとえ短時間であっても絶対にしないよう気を付けてください。
Writer: 加藤久美子
山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。
なるほど。きちんと車内を確認しないと周辺に騒音を撒き散らして確認せざるを得なくするということですね。これなら幾ら出鱈目な保育所でも周辺からのクレームでいい加減な業務をできなくなりますね。