物流の「2024年問題」って何? 一般消費者も無関係じゃない! ドライバーの働き方改革がもたらす影響とは

物流業界の変革に向けた対策とは?

 そもそも、トラックドライバーに対する働き方改革が実施される背景には、トラックドライバーの就業状況がとても厳しいという現実があります。

 全産業と比較すると、トラックドライバーの年間労働時間は2112時間で約2割長く、年間所得額は446万円と約1割低く、さらに有効求人場利率は全産業が1.1倍なのに対して2.0倍と、全産業と乖離している状況です。

高速PAに駐車するトラック
高速PAに駐車するトラック

 こうした厳しい現実があるにもかかわらず、2024年問題に対して具体的な取組をすでに実施している運送関連の事業者は約5割に留まっているのが物流業界の実状です。

 そのため、国としては、2024年問題に対する認知度をこれから一気に高めると同時に、具体的な対策を短期間に導入することになったのです。

 2024年問題は物流業界の体質的な課題の一部が表面化したにすぎず、長期的な視点で物流業界の抜本的な変革が必要だということでしょう。

 では、物流業界の変革に向けた対策とはどういったことなのでしょうか。

 国の考えでは、荷主・物流事業者間の商慣習の見直し、物流の標準化、そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)といった最新技術の活用、そして荷主企業が消費者の行動変容を促す仕組みが必要だとしています。

 このうち、DXについては、トヨタ、いすゞ、ダイハツ、スズキなどによるCJPT(コマーシャルジャパンパートナーシップ)がすでに表明しているような、車両情報や配送情報などをデータ基盤で共有するシステムが進んでいくでしょう。

 ここに、運送事業者の荷物管理システムが融合することが考えられますし、また物流で使用する様々な荷台や機材などの標準化も進むことになるでしょう。

 また、高速道路による都市間輸送では、レベル4自動運転トラックの活用が考えられます。経済産業省と国土交通省が2024年度から、新東名高速道路で夜間に自動運転車専用レーンを設定した実証試験を始め、早期の実用化を目指します。

 そのほか、高速道路のIC近くに、自動運転トラックと近距離輸送用トラックとの結節拠点を整備する計画も、運送事業者と道路事業者が連携して実証をおこなう運びとなっています。

 一方で、変革へのハードルがあるのが、業界の商慣習の見直しでしょう。商慣習にはさまざまなことがありますが、そのなかには明文化されていないものが少なくないと思われます。

 ここに、データによるファクトを重視した変革の議論を持ち込み、商慣習を抜本的かつ早期に変える必要があるでしょう。

 そして、消費者の行動変容も、物流変革に向けた大きなポイントではないでしょうか。

 近年、多くの消費者にとって、スマホやパソコンでの電子商取引が普及し、その際の送料無料とか、当日配達といった、数年前には考えられなかったことが常識化しています。

 しかし、物流量の急速な増加と2024年問題を含めた物流変革に対して、消費者側が物流に対する過剰な要望をしないことも必要になってくるかもしれません。

 例えば、郵便では2021年10月2日から、普通扱いの郵便物・ゆうメールは土曜日配達を休止しました。また、ヤマト運輸は2023年6月1日から、一部区間で宅急便の届け日や指定時間帯を変更し、届け日がこれまで翌日だった一部区間で翌々日配送となることを発表しています。

 その理由について「社会や地域のお客様のニーズ・ご要望に今後も安定した品質でお応えし続けるため」としています。

 こうした物流事業者の事業方針の転換によって、消費者側が物流の変革に対する理解をするという点で、行動変容することが大事な時代になったのだと感じます。

 次世代の日本に向けて、さまざまな方法で物流変革が進むことを期待したいと思います。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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