なぜクルマの「棒アンテナ」見かけない? かつての定番アイテムに変化アリ… 存在感薄くなった理由とは

かつてクルマでラジオを聴くためには、屋根にある棒状の金属アンテナを手で伸ばしたりしましたが、最近はあまり意識することすらなくなりました。イマドキのアンテナはどうなっているのでしょうか。

電動で伸びる「金属アンテナ」がステータスだった時代も

 以前は金属棒を手で伸ばすタイプが主流だったカーアンテナですが、近年は、20センチ程度のポールアンテナや、サメの背びれのような形のシャークフィンといったタイプが主流となっています。
 
 また見た目だけではなく、その役割も変わってきているといいます。

トランクから「にょきにょき」!? 伸び縮みする金属棒のカーアンテナもすっかり見なくなりました
トランクから「にょきにょき」!? 伸び縮みする金属棒のカーアンテナもすっかり見なくなりました

 1950年代、最初に登場したアンテナは、ラジオを聴くためにありました。当時は、1メートル弱の細い棒状の金属製アンテナを、釣り竿のように伸ばして使う「ロッドアンテナ」型でした。

 運転席に座ったまま伸縮できるよう、Aピラー(フロントガラスを支える柱)部分に格納できるタイプが主流でしたが、なかには、フロントフェンダーやリアフェンダー、ルーフなどに装備されていたクルマもありました。

 1970年頃になると、高級車向け仕様として、アンテナが自動で伸縮する「オート(電動)アンテナ」が登場。当時、オートアンテナは高級車の証でした。

 このロッドタイプには、走行風でアンテナがしなってスムーズに伸縮できなくなったり、格納し忘れて駐車場などで引っかけて折れることがあるという弱点がありますが、受信感度が高く安価であるため、現在でも、商用バンやトラックなどのコスト重視のクルマには採用されています。

 1990年代には、フロントウィンドウやリアウィンドウに貼り付ける「フィルムアンテナ」が登場しました。

 透明のフィルムに針金状の細いアンテナ線を組み込んだフィルムアンテナは、ボディのデザインに影響を与えないとして理想的とされましたが、ロッドタイプと比べてラジオの受信感度が低く、しかも高価だったため、普及には至りませんでした。

 ただ現在でもフィルムアンテナは残っており、主に地デジTVの電波受信用として活用されています。

 2000年に入ると「コンパクトポールアンテナ」が登場。長さは20センチ程度、コイル状のアンテナを黒などの樹脂製のカバーでおおった短いアンテナ棒です。

 可倒式が主流で取り外し可能なタイプもあり、伸縮はできません。アンテナ本体は短いものの、コイル状のアンテナの感度が高く、ロッドタイプと同等の性能をもっています。

 シンプルで安価なため、現在は軽自動車やコンパクトカーで主流となっています。

 そして現在、最も主流となっているのが、「シャークフィンアンテナ」や「ドルフィンアンテナ」とよばれるアンテナです。

 現在は、SUV系やセダン系のほとんどで採用されており、軽自動車の一部でも採用されるようになりました。

 世界で初採用したのは2001年デビューのBMW「7シリーズ」で、日本車メーカーの中では2005年のレクサス「IS」が初の採用車でした。

 ラジオの受信だけではなく、テレマティクスサービス用の通信や、ナビゲーションのGPS、リモンコンキーなど、様々な無線の送受信を行うという、多機能なインテリジェントアンテナとなっています。

 日産のバッテリーEV「アリア」では、このシャークフィンアンテナを2つ装備。高度な運転支援技術「プロパイロット2.0」を動かすため、準天頂衛星の情報を取得する目的で必要となるようです。

 シャークフィンアンテナのよさは、多機能性に加えて、スタイリッシュなデザイン性です。

 ただ、ポールタイプとフィルムタイプの中間くらいのコストがかかるので、全メーカーが採用することは考えにくく、今後も廉価なロッドタイプとシャークフィンアンテナが共存していくものと予想されます。

 ただ将来的には、こうしたアンテナ本体すらエクステリアから消え去っていくかもしれませんね。

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2件のコメント

  1. そういえば大昔、支店長車である黒塗りクラウンに着いてましたね。
    何をどうしたのか根本から折れてましたけど。
    最近気づいた点としては、スバル製造のサンバーまでは乗ってた車すべてAピラー格納の1本モノでしたが、今のエブリィって2段ロッドなんですね。市内で使う限りでは10cmも引き出せば問題なく受信できます。
    ただ、NHKと北海道のAM局を除き、民放の殆ど全てのAM局はFMへの移行の段階にあり、僻地で強いAM局は海岸線でポツポツとあったアンテナ(垂直方向の鉄塔を三方向からワイヤーで固定)が解体され始め、FMに移行しつつある。
    FMは電波の直進性のみで起伏(障害物)に弱く、飛距離(低出力なため飛距離が短い)に難ありなため日本海側の海岸線沿いではまともにラジオが受信できないエリアも増えています。

    将来的にラジオのアンテナが無くなるとしたら、車が必要な情報は全て携帯の電波で送受信するようになり、ラジオは音声配信。ディスプレイオーディオはAndroidタブレットのようになって、ニュースや番組、映画なんかもストリーミング配信となり標準で見られるようになるんでしょうね。

  2. 筆者は出来の知識が皆無の様に見受けられるのであえて記すが、フィンアンテナの中に用途の異なる複数のアンテナを仕込んでいるのであって、単に一つのアンテナがある訳では無い。電波を使っている以上、技術革新によりユーザが意識しない大きさに成っていくことは考えられるが、無くなることはないと言える。スマホにアンテナが無いって?違う違う、大きさが変わって、本体にちゃんとついてますよ?!

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