三菱の新型軽「デリカミニ」9000台受注の快挙! 従来型はコワモテすぎた!? 新型が爆売れする訳
女性ユーザーにも配慮したマイチェンを実施
それにしても、三菱車のフロントマスクが電気自動車の「eKクロスEV」まで含めてようやく共通化された直後なのに、新型デリカミニが異なるフロントマスクを採用した理由は何でしょうか。
そこを開発者に尋ねると、大きく分けてふたつの説明がありました。
ひとつ目は「ダイナミックシールドのデザインは進化しています。以前は三菱全車のフロントマスクをほぼ同じデザインに統一していましたが、今は新しい段階に入りました。ダイナミックシールドの考え方を踏襲しながら、車種ごとの個性も大切にしています。そこで新型デリカミニには、この車種の個性に合ったヤンチャな男の子を思わせるフロントマスクを採用しました」とのこと。
ふたつ目は「新型デリカミニのような全高が1700mmを超える軽自動車では、お客さまの60%から70%は女性です。購入時の名義は夫でも、実際に使ったり車種を決めるのは妻になることが多いです。その時に以前のeKクロススペースの顔立ちは、お客さまから『コワイ』という感想も聞かれ、そのこともフロントマスクのデザイン変更に影響を与えています」といいます
確かに軽自動車のスーパーハイトワゴンは、子育て世代の女性に人気が高いジャンルです。そうなるとメーカーも母親あるいは子どもにも配慮します。
実際、軽自動車の開発者からは「スーパーハイトワゴンの好調な販売には、お客さまが周囲の人達と歩調を合わせたい気持ちも働いているでしょう」という話を聞いたことがあります。
新車販売の4割を占める軽自動車のなかでも、N-BOXやダイハツ「タント」、スズキ「スペーシア」といったスーパーハイトワゴンが軽乗用車の50%を占めており、街でも多く見かけるようになりました。
「周囲の人達と合わせたい」と考えた時、大勢の人が乗っているスーパーハイトワゴンを選ぶ人が増加しているというわけです。
そして、eKクロススペースでは背の高さは同程度でも顔立ちの個性が強すぎましたが、新型デリカミニなら愛敬もあって馴染みやすいです。周囲と足並みをそろえながら、適度な個性化も図れます。
この適度なサジ加減が利いて、新型デリカミニは注目度を高め、さらには広く認知されている「デリカ」の車名を冠したことも成功の秘訣でしょう。
どのような人が新型デリカミニを購入しているのか、販売店に尋ねると以下のように返答されました。
「新型デリカミニは、三菱の軽自動車からの乗り替えに加えて、他メーカーのミニバンやSUVに乗っているお客さまがセカンドカーとして購入することもあります。
クルマを売りにくい今の時代に、新規のお客さまに恵まれるのはうれしいです。
またeKクロススペースのお客さまが、早くも買い替えることもあります」
なお、好調な販売の影響で納期が遅れており、以前は6か月から8か月でしたが、今は正確には分からない状態だといい、購入を検討しているのであれば商談は早めに開始したほうが良いでしょう。
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背の高い軽自動車は、広い室内や豊富な収納設備など、優れた実用性を特徴としています。従ってデザインの優先度が低いように思われますが、実際にはフロントマスクが売れ行きを大きく左右します。
デリカミニも顔立ちの変更で人気を高め、発売から3年程度のeKクロススペースから乗り替えるユーザーもいるほどですから、「軽自動車も顔が命」であることを明確に示しているといえます。
新型デリカミニのようなデザインのコツを把握すると、販売面とその後の商品開発では、大いに有利になります。
新型デリカミニの成功もあり、今後の軽自動車は従来以上に顔立ちにこだわるようになるのではないでしょうか。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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