桜が開花! 走りながら「お花見」可能!? 高速道路で「日本の春」実感! 沿線の木々はいつからはじまった?

春になると、高速道路沿いに桜が満開に咲き誇る様子を見ることができます。こうした植樹はどのように行われているのでしょうか。そして桜が多いことにも理由があるといいます。

高速道路沿いの桜の植樹は旧「道路公団」時代に行われた

 高速道路の中央分離帯やロードサイド、周縁地域の山肌や、SA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)は、多くの植物で覆われています。

 これは自然に生えたものだけではなく、生態系や環境を考えて適切な品種が選ばれ植えられていますが、中でも桜の木が多い理由について紹介します。

お花見に行きたい! 春の景色を象徴する「桜(サクラ)」[画像はイメージです]
お花見に行きたい! 春の景色を象徴する「桜(サクラ)」[画像はイメージです]

 毎年桜が開花する季節になると、ロードサイドやSA・PAに桜の木が多いことに気づきます。

 これは、かつて高速道路を運営していた旧・日本道路公団の記念事業によるものです。

 1986年に「高速道路に桜前線」と名付けられた活動は、道路公団創立の節目を記念してSA・PAを中心に桜を植えたことがはじまりでした。

 日本列島を縦断しながら北上する桜の開花を、高速道路でも楽しんでもらう目的ではじめられた取り組みです。

 さらに平成に入ってからは、日本列島のイラストに高速道路と桜前線が描かれたポスターを掲示し、ポスターに桜の開花状況を示した「つぼみ」「3分咲き」「5分咲き」「7分咲き」「満開」のシールで情報提供をしていました。

 訪れた人がこのポスターにより桜開花状況を確認できるしくみです。

 桜の木は、地域に適応している郷土種から選ばれ、北海道では「オオヤマザクラ」、本土では「ソメイヨシノ」、沖縄では「ヒカンザクラ」が主に植えられました。

 2005年の道路公団民営化で、NEXCO西日本、中日本、東日本の3つに分割されたことに伴い、桜開花状況に関する情報提供も休止され、現在に至ります。

 各社によると、高速道路に植えられている樹木はおよそ500万本で、そのうち桜の木はおよそ37万本あるといいます。

 春の到来を感じさせてくれる桜は、日本人にとっても特別な花であることから、今後も積極的に植えられる予定です。

※ ※ ※

 NEXCO各社によると、桜の木も含めた高速道路周辺の緑地面積は、全国すべて合わせると9100haになります。この面積は山手線内側の面積(約6100ha)の約1.5倍だといいます。

 緑化事業は、道路と自然が共存するための大切な3つの機能を持っています。

 1つ目は「環境保全機能」。具体的には、植物の光合成を利用した二酸化炭素削減を目指す地球環境保全、樹木による日陰地帯を利用したヒートアイランド抑制機能、生物多様性保全と生態系活性を目的とした品種植樹などの取り組みがあります。

 2つ目は「景観向上機能」です。高速道路遮音壁につる性のグリーンを這わせて遮蔽効果を高める事業や、モニター実験や行動シミュレーションを行いながら、緑化による景観調和やドライブ途中の休憩機能の向上研究が進められています。

 3つ目は「安全機能」です。ロードサイドの植栽による視線誘導、樹木による防風、防雪、防砂効果、また高速道路造成により生じた斜面ののり面の安定を目的とした植樹も行われています。

 NEXCO各社ではこれらの緑化事業が、道路建設に伴う周辺環境の変化に対しても配慮されたものであると説明します。

 一例としては、SA・PA周辺に整備した水辺環境に生態系がつくられ、道路開発後の自然環境が復元されているケースがあります。

 また高速道路の空間に整備されたビオトープ(生物群集の生息空間)に、近隣の川から生物が移り住み、生態ネットワークが生まれた例もあるといいます。

[編集部注記:2023年3月20日、一部の文字を修正しました]

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