どうする!? 他人事ではない「高齢運転者事故」! 解決策は「免許制度厳格化」以外にも? ドライバー自身の意識付けも重要に

「運転免許制度」厳格化だけでは問題は解決できない!

 あくまでも筆者(桃田健史)の私見ですが、高齢ドライバーの事故に対する予防対策には大きく2つあると思います。

 ひとつは、「運転免許制度のさらなる厳格化」。

 もうひとつが「クルマの最新技術や交通システム」を「健康な身体づくりと街づくり」の観点で考える、市町村の地区レベルでの定期的な会合の実施です。

「高齢運転者事故」は運転免許制度の厳格化だけで済ませるのではなく、社会全体として公共交通の問題なども含め総合的に取り組むべきでしょう[画像はイメージです]
「高齢運転者事故」は運転免許制度の厳格化だけで済ませるのではなく、社会全体として公共交通の問題なども含め総合的に取り組むべきでしょう[画像はイメージです]

 まず1つ目の対策となる運転免許制度ですが、国はこれまでも段階的に、高齢ドライバー対策の内容を引き上げてきました。

 具体的には、平成9年の道路交通法の改正で、平成10年10月1日から75歳以上で運転免許を更新する場合、高齢者講習の受講を義務付けました。平成14年6月1日からは、対象年齢を70歳に変更しています。

 次いで、平成21年6月1日からは、75歳以上で認知機能検査を義務付け。さらに平成29年3月12日からは、高齢化講習の高度化と合理化が行われ、75歳以上で一定の違反歴があり、かつ認知機能検査の結果によっては、実車指導を含めた臨時高齢者講習を義務付けたのです。

 直近では令和3年5月13日から、75歳以上で一定の違反歴があると運転技能検査を義務付けました。

 これは単なる講習ではなく実質的な実地試験なので、合格しないと運転免許が更新できません。だだし、更新期間が来るまで何度でもトライできる仕組みです。

 こうしたこれまでの流れを振り返れば、今後の厳格化の可能性としては、例えば運転技能検査は70歳から、また高齢者講習を65歳にする、といった対象年齢の引き下げが考えられます。

 そうなると、警視庁や道府県警察本部の免許センター、または警察から委託を受けて講習を行う教習所の対応が大変になることが想定されます。

 しかし高齢ドライバーの事故を予防するのは必須であり、システムの合理化を図るなどの対応は求められるでしょう。

 そのほか、現在は対象がサポカーのみとなっている「限定免許」についても、海外事例を改めて参考にした上で、日本にあった形についての協議を進めることを期待したいものです。

 例えば日中のみ、自宅から半径数kmのみ、家族や知人の同乗時のみといった、様々な条件が考えられるでしょう。

※ ※ ※

 高齢ドライバーの事故に対するもうひとつの対応策は、近隣住民と地元自治体との対話の場の拡充です。

 内容は多岐に渡ると考えられます。

 例えば、最新の高度運転支援システムの重要性を紹介したり、路線バス、コミュニティバス、オンデマンドバスなど新しい交通システム、電動車椅子など様々な交通手段の利用方法や利用の実態を報告すること。

 または、新しい交通システム導入の可能性について話し合うことなどが考えられます。

 こうした話の場は、どうしても堅苦しくなりがちです。

 そこで、健康維持のための健康診断、体力測定、健康運動など、運転をするしないは限定せず、特に運転する人は日頃の健康状態をしっかり把握することを心掛けてもらうような工夫を、それぞれの自治体が考えていくことが重要だと筆者は考えます。

 こうした試みをすでに実施している自治体はありますが、高齢ドライバーの視点をもっと多く盛り込んだ内容もあり得るはずです。

 さらに踏み込んで、街づくりの観点でも、地区の道路や建物の実状、危ない交差点の改善方法など、高齢ドライバーに限らず、住民が参加する「移動や生活に係る語らいの場」を設けることで、高齢ドライバーの運転に対する意識が変わるのではないでしょうか。

 いずれにしても高齢ドライバーには、交通参加者としての自覚を改めて高めて頂くことが重要です。

 そして自身の健康や身体の変化について日々しっかりと自覚した上で、交通法規をしっかり守り、周囲の交通や人に対する思いやりを持った、安心安全な運転を心がけて頂きたいと思います。

※編集部注記:2023年3月13日午前10時10分、数値の誤りを一部修正しました。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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3件のコメント

  1. 以前か壁つたいにヨロヨロで車に辿り着き、更に車にもたれかかるようにして運転席に倒れ込み何とか走り去った老人を見た私と、周りの人たちはあんなのが運転しているんだね驚きであった。知力体力運転技術の三拍子そろわない者に免許を与えるべきではなく、強制取り上げで良いのである。
    其処には人権など考慮する必要はない。被害者が増えるばかりである。

  2. 記事の高齢ドライバーの割合が間違えています。
    65歳以上の割合には、70歳以上75歳以上80歳以上はすでに含まれているため、それぞれを足し合わせてはダメです。これでは全体の5割ほどになってしまいますが、実際には統計によると1927万人、23.5%です。
    また、ドライバー全体8190万人に対して男性のみの割合と人数が書かれている点も間違えています。

    • 市川滋彦様

      ご指摘ありがとうございました。
      修正いたしました。

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