「走りの本質が見えた?」トヨタ新型「クラウン」雪道でも実感! 四駆が生み出す“負けない走り”とは
「E-Four」と「E-Fourアドバンス」で異なる走りとは
E-Fourでは、直進時はFF駆動でクルマが旋回姿勢に入ると4WDに切り替わります。
その切り替えは瞬時なので舗装路ではほとんど気にならなかったのですが、雪上ではそのわずかなラグが「ちょっと怖いかも」と感じたのも事実です。
対するE-Fourアドバンスは常時4WDのため、直進から旋回に至るまで常に安心して走ることができました。
例えるならば、前後が独立した電動4WDながらも、見えないセンターデフで四輪を拘束しているかのような「安心感」と言ったら良いでしょうか。
これは車両安定制御システム(VSC)をオフにするとより明確に分かります。
ちなみにドリフトさせようと思うと実はE-Fourのほうが簡単です。逆を言えば安定した走りをしたくても無駄な挙動が出てしまいます。
対するE-Fourアドバンスは、ブレーキ/アクセル/ステアリングの操作如何でクルマの姿勢がどうにでもなる…つまり姿勢変化を楽しむ走りも安定した走りも自在です。
ちなみに意図的にテールスライドさせると、どちらも「お前はGRヤリスか!?」と思うようなゼロカウンターの四輪ドリフトが可能ですが、E-Fourはコーナー途中でリアの蹴り出しが弱くなるようなイメージで最終的にはアンダーステアとなり、「やはりFFベースの四駆だね」と感じてしまう走りです。
一方、E-Fourアドバンスはアクセル操舵に対してリアの蹴り出しが最後まで変わらないので、どちらかと言うと「君はFRベースの4WDなの?」と思うような姿勢での走りが可能でした。
この辺りはパワートレインのキャラクターの違い(応答性、レスポンス、パワー感など)や、後輪モーターの連続使用ができる/できないと言うようなハードウェアの差や目指す走りの方向(RS系は走り重視、G系は燃費とのバランスも考慮)の違いがあると思います。
しかし、今回のような低μ路を走らせた時の「安心・安全」と「懐の深さ」、そして「クルマとの一体感」に関しては、間違いなくE-Fourアドバンスの方に優位性があると感じました。
ただ、誤解してほしくないのはE-Fourがダメなのではないと言うことで、既存技術を活用しながらも、かなりのレベルに来ているのは間違いないです。
今回はテストコースだから見えてきたところもありますが、日常域ではほぼ問題ないです。
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筆者(山本シンヤ)は、TNGAを初採用した先代(15代目)の基本素性の良さを活かした精度の高いハンドリングを今でも高く評価していますが、16代目は「電動化」と「制御」、そして「四駆」を上手に活用することで、それに負けない走りを実現できています。
これまでトヨタは四駆に対して消極的でしたが、GRヤリスが登場して以降“攻め”の姿勢ですが、恐らく四駆の“レシピ”を見つけたのでしょう。
2021年12月に行われたトヨタ「BEV戦略に関する説明会」で、筆者が豊田社長に質問をした時の回答の中に、「四駆のプラットフォームを1つ作れば、制御如何でFFにもFRにもできます。そんな制御を持ってすれば、モリゾウでもどんなサーキット、どんなラリーコースでも安全に速く走ることができる」とコメントがありました。
今回クラウン・クロスオーバーを低μ路で走らせてみて、「あの時の答えの“本質”が少し理解できたかな?」と思いました。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
そもそも先代までのクラウンはFRベースのフルタイムAWDであり、ランクル等と同じくセンターデフを有する本格四駆だった。
駆動力配分も先代では前後40対60とFR的乗り味は残しつつ、安定感抜群のシステムでした。
スポーツ方向に振ったスバルのVTD-AWDをより安定方向に振った感じ。
今回FFベースとするにあたって、従来のE-fourでは安定感に劣るため、RSグレードではリアモーターを80PSに増強し、リアモーターに常時トルク配分する(仕様では0になる場合もあるようだが)事で、ハリアー等よりレベルアップした制御が可能となった。
しかし、先代までのフルタイムAWD以上かというと疑問符がつく。
例えば高速道路ではモーターの力が頭打ちになるため、80PSしかないモーターがどの程度働いてくれるのだろうか?
やはり高速道路では先代までのクラウンやスバル、三菱の四駆が安心感あるように思う。