スズキが2023年度にEV6車種導入へ 鈴木社長は「EVシフトは適材適所」と慎重姿勢崩さず
スズキは2023年度に日本市場へ6モデルのEVを投入予定!
こうしたなか、日本のユーザーにとっては「スズキもこれからEVに本腰なのか」「スズキのEVはどんな特長があるのか」といったところから、さらには「スズキの軽も全部EVになるのか」などの疑問を持つ人が少なくないでしょう。
スズキの成長戦略にむけた会見資料によると、すでにEVシフトが急激に進んでいる欧州では、2024年度からEVを初導入するとし、2030年度までにEV5モデルを投入。パワートレイン比率でEV80%を目指します。
一方最重要国のインドでは、EVの導入開始は2024年度で、2030年度までに6モデル(パワートレイン比率の15%)としています。
そして日本では、EVの導入開始は欧州やインドより1年早い2023年で、まず軽商用EVを皮切りに、2030年度までに6モデル、パワートレイン比率の20%(乗用車のみ)という数字を公表しました。
残りの80%もハイブリッド車とし、新型ハイブリッドシステムも開発していくとしています。
資料で公開されたクルマのシルエットで、日本導入予定の6モデルを予想してみましょう。
軽では、商用EVと乗用EV、登録車では小型EV、小型SUV、中小型クロスオーバー、そして中型クロスオーバーといったイメージが描かれています。
スズキのEVモデルについては、インドで2023年1月開催のオートエキスポ2023でコンセプトモデル「eVX」が世界戦略EVとして登場していますが、これが今回シルエットにあった日本向け中型クロスオーバーなのかもしれません。
その他のモデルについても当然、「eVX」を含めてトヨタとの協業が前提にあることは確かです。
そのうえで、鈴木社長は「トヨタから技術アドバイスを受けているが、スズキがEV技術を習得していくなかで、トヨタ側にいわれっぱなしでは、スズキの存在価値はない」とキッパリと言い切り、トヨタとEV開発について切磋琢磨をしていく姿勢を明確に示しました。
そして、スズキの真骨頂である軽については「(全ての)軽自動車が(早い時期に)EVになるとは思えない」という考えです。
なぜならば、軽自動車は様々な人たちが日常生活や仕事で使う「生活車」であるためだといいます。
軽自動車には様々な需要や使われ方があり、それを一律、EVに切り換えることは現実的ではないという発想からの発言だと思います。
そのうえで鈴木社長は言葉を選びながら「EVがお客様を選ぶという感覚も大事ではないか」といいます。
つまり、全てのユーザーの要求に合うようなEVを、今の軽自動車のようなイメージで商品化することは難しく、使い方をある程度限定させる前提とすることが、軽EVとしての当面の役割ではないか、という意味合いだと筆者は受け止めました。
さらに、鈴木社長は「EVの第一弾、第二弾、そして第三弾とお客様と一緒に(段階的に)EVを育てていきたい」と表現しています。
軽EVの価格については「(お客様としては)価格は安い方がいい。(近年導入している)軽自動車に対する(価格イメージの)リミットは200万円が基準」として、「100万円台に抑える必要があるが、(想定以上に電池価格が下がってきておらず、そうした新車価格にするための)ハードルは高い」と、胸のうちを明かしています。
また、EVで重要な充電インフラについては「自宅での充電が基本だが、全国に120万カ所は必要」という個人的な見解を述べています。
そのほか、サブスクリプションモデル以外で、新車EVを販売しない形式での事業構築についても、「所有から共有」という観点で営業部門と協議を進めていることを明らかにしています。
現在、スズキ車の国内保有総数は1070万台。
これが今後、どのタイミングで、そのようにEVシフトしていくのでしょうか。
鈴木社長は会見の中で何度も、EV普及について「適材適所」という言葉を使っていたことが印象的でした。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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