新型「セレナ」なぜ残価率がランクル並みに高い? トヨタとホンダのライバル車に対抗する日産の秘策とは

“お買い得感”を強調する新型セレナ

 次は新型セレナとライバル車で、月々の返済額を比べてみましょう。

 まず、新型セレナ e-POWER ハイウェイスターVの価格は368万6100円で、3年後の残価率は前述の67%です。3年間の均等払い(実質年率4.9%)なら月々の返済額は5万500円になります。

「ノア ハイブリッドS-Z」の価格は367万円で、3年後の残価率は55%。3年間の均等払い(実質年率5.8%)で月々の返済額は6万1400円です。金利の違いもありますが、月々の返済額はセレナに比べて1万900円(比率に換算すると22%)高いです。

「ステップワゴンe:HEVスパーダ」の価格は364万1000円で、3年後の残価率は54%です。3年間の均等払い(実質年率3.5%)で月々の返済額は5万6600円と、月々の返済額はセレナよりも6100円(比率に換算すると12%)高くなります。

セレナのライバル車であるトヨタ「ノア/ヴォクシー」
セレナのライバル車であるトヨタ「ノア/ヴォクシー」

 これらの3車種で取り上げたグレードは、いずれも機能に対して価格が割安なハイブリッドの買い得仕様です。その価格はすべて360万円台に集中しており、各車が買い得グレードの価格を限界まで下げて、熾烈な販売合戦を展開していることが分かります。

 そうなると、価格がほぼ同じでも、残価設定ローンの残価率を高めれば、月々の返済額がライバル車よりも下がって“お買い得感”を強調できます。

 日産の販売店では「今は新車を購入されるお客さまの半数近くが、残価設定ローンを利用されます」といい、ライバル車よりも遅れてフルモデルチェンジを受けたセレナにとって、残価率を高めて残価設定ローンの返済額を抑えられることは、強力な販売促進対策になるのです。

 残価率が高くなると返済額を減らせるためユーザーのメリットは増えますが、日産のリスク負担は重くなります。数年後に返済期間を満了して顧客がセレナを返却したとき、中古車市場における流通価値が高くないと、残価設定ローンの収支に損失が生じるからです。

 つまり新型セレナの残価率を高めた以上、日産は、中古車市場で高値を保てる人気車にしなければなりません。

 そのためにもセレナは、SUV風のクロスオーバーなど、魅力的なバリエーションを投入することになるでしょう。

 そうなるとノア/ヴォクシーやステップワゴンも対抗して商品力を高めますから、ミニバンはますます魅力的になっていきます。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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