新型「セレナ」なぜ残価率がランクル並みに高い? トヨタとホンダのライバル車に対抗する日産の秘策とは
トヨタ「ノア/ヴォクシー」、ホンダ「ステップワゴン」といったミニバンの全面刷新が相次ぐなか、日産「セレナ」が遅れて登場しました。後から出た新型セレナには不利な状況ですが、ライバル車に対抗する作戦があるようです。
ミニバンが次々にフルモデルチェンジ
2022年は「ミニバンの年」でした。1月にトヨタのミドルサイズミニバン「ノア/ヴォクシー」、5月にホンダ「ステップワゴン」、11月には日産「セレナ」がフルモデルチェンジを実施したほか、コンパクトミニバンでは、8月にトヨタ「シエンタ」も一新されました。
同じカテゴリーの車種が、示し合せたように同時期にフルモデルチェンジをするのにはどのような理由があるのでしょうか。
各メーカーの開発者に尋ねると、「ミニバンは国内専売で、コンパクトカーも国内の販売比率が高いカテゴリーです。各メーカーが同じお客さまに向けて商品を開発しているため、似通った時期に同じカテゴリーの車種が一新されるのでしょう」という返答が多く聞かれました。
そこで改めて考えたいのは、同じカテゴリーの新型車が相次いで登場したことにより、ユーザーにどのようなメリットが生じるかです。
今は新型コロナ禍の影響で半導体などの供給が滞り、新車の納期も長引いています。販売競争をしたくても困難な状況ですが、それでも冒頭に挙げたミドルサイズミニバンは、互いに比べられるライバル同士です。
ミドルサイズミニバンのライバル競争で有利な車種は、2022年に入って真っ先に発売されたノア/ヴォクシーでしょう。逆にもっとも遅かったセレナは不利です。ミニバンを欲しい人達が、ノア/ヴォクシーやステップワゴンを購入し始めた後で、新型セレナが登場したからです。
そこで日産は、新型セレナに用意される残価設定ローンの残価(残存価値)を高めました。
残価設定ローンとは、契約時に数年後の残価を設定して、残価を除いた金額を分割返済するローンです。仮に3年後の残価が新車価格の45%なら、残りの55%を3年間で返済。返済期間を満了しても車両は自分の所有にはなりませんが、少ない返済額で使って返却できます。価値が減る分のお金を支払うため、リースに近いローンともいえるでしょう。
そして残価が高ければ、残りの返済額は減るため、月々の支払い額をさらに安く抑えることができます。
一般的に3年後の残価は新車価格の43%から48%ですが、新型セレナの「e-POWERハイウェイスターV」は67%と際立って高いのです。5年後の残価率は、一般的には35%から40%ですが、新型セレナのe-POWERハイウェイスターVは56%です。
ここまで残価率が高い車種は珍しく、予約が殺到し受注を停止する前にトヨタ「ランドクルーザー」が提示していた、3年後で70%の高い残価率に匹敵します。残価率の高さでランドクルーザーに対抗できるのは、新型セレナだけでしょう。
残価率が高いと月々の支払いが安くなるけど、最終回支払い額が高額になるんだよな
3年や5年で乗り換える人は良いけど、乗り潰すけど月々の支払い額を抑えたいという理由で残クレを使うのはちょっと危ないかも