ついていれば「高級車」の証し!? 後席の「アームレスト」は昭和の時代なぜ「特別」だったのか
「リアアームレスト」つい試したくなる「オジサンあるある」!?
ところが1960年代末になると、高級車だけでなく、当時「ハイオーナーカー」と呼ばれたアッパーミドルクラス「コロナ・マークII」の一部にもリアアームレスト設定グレードが現れ、これ以降このクラスでの装着はメジャーとなっていきます。
しかしまだハイオーナーカーも高級車も大衆車との価格差が大きく、文字通り「高嶺の花」。リアアームレストも遠い存在でした。
例えば1970年のトヨタ車の販売価格(東京店頭渡し価格)を見てみると、「カローラDX」が53.7万円に対し「コロナ・マークIIハードトップ 1900GSS」が106.2万円、「クラウンセダン スーパーDX」が112.75万円といった具合です。
1980年代には、大衆車クラスや「コロナ」「ブルーバード」などの中堅ファミリーカークラスでも、上位車種並みに「パワーステアリング」「パワーウィンドウ」「エアコン」などを装着したグレードが増えていくなか、最上級グレードのみにある特別な装備のひとつとして、リアアームレストの文字が誇らしげにカタログへ記載されていました。
またこの頃になって、高級車に匹敵する豪華な内装を誇った「マークII」をはじめとしたアッパーミドルモデル(いわゆる「ハイソカー」)が爆発的なヒットを記録。リアアームレストも当然装備されていました。
しかしクラウン、セドリックといった高級車でさえ、現在の商用車よりも装備が少ないほど簡素なスタンダードグレードが存在していた時代なので、前述の車種すべてがリアアームレストを持っていたわけではありません。
またハイソカーが爆発的に売れたとはいっても、やはり販売のメインはカローラ、サニーといった大衆クラスだったこともあります。
そういう意味で1980年代前半頃でも、まだリアアームレストには特別感があったのです。
それもあって当時の筆者は、リアアームレストがあるクルマの後部座席に乗り込むと、自分の家のクルマではなくても、真っ先にアームレストを引き出していました。
肘をアームレストにかけ、子供ながらも小さな優越感を感じたものでした。
筆者(遠藤イヅル)はいま51歳ですが、いまだにあの頃の習慣が消えず、仕事で試乗したりディーラーでクルマを見るとまずリアアームレストを引き出して確認する癖があります。
これは「オジサンあるある」かもしれません。
そのため自分の買ったクルマにもリアアームレストがついていると、妙に嬉しくなってしまいます。
現在所有する日産「フォルクスワーゲン サンタナ」(当時の日産 座間工場製モデル)が手元に届いた時、まず後席のセンターアームレストを引き出して座り、ニンマリしたのはいうまでもありません。
そんなリアアームレストも、前述のように多くの車種に普及が進んでおり、「あの頃」のような特別感は次第に薄れていってしまうのかもしれません。
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。
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