2090万円のトヨタ「センチュリー」に違法判決なぜ? 山口県「貴賓車購入」で勘違いされる問題点とは

忘れてはいけない「貴賓車」の意義

「貴賓車」に対してどのような車種を選ぶかについての明確な規定はないため、極端にいえば軽自動車を選ぶことも可能です。

 実際には、トヨタ「クラウン」や「アルファード」、レクサス「LS」、そしてセンチュリーのような国産高級車が選ばれるのが一般的です。

 今回のケースの場合、そもそも「貴賓車」を購入する意義自体が不透明であったために、たとえ購入したものがセンチュリーでなかったとしても、大きな問題となっていた可能性は高いと見られます。

 たしかに、歳出削減は国や地方自治体における最重要課題のひとつですが「貴賓車」には、国内外の要人に対して最大限の礼節を尽くすことで外交および内政上のメリットを得るという大きな目的があるため、その存在そのものを否定してしまうのは早計です。

 世界を見ると「貴賓車」として用いられるクルマは、その国を代表する自動車メーカーのフラッグシップモデルであることがほとんどといえます。

 いずれも、いわゆる高級車であることは事実ですが、単なるぜいたくなクルマというわけではなく「貴賓車」に求められる品格や機能性、実用性を追求した結果、高額なクルマとなっているケースが多いようです。

まさにショーファーカーを代表するトヨタ「センチュリー」 1度は後席に乗ってみたい
まさにショーファーカーを代表するトヨタ「センチュリー」 1度は後席に乗ってみたい

 センチュリーについても、2008万円という国産車随一の価格でありながらも、設計思想や生産工程についても一般的なトヨタ車とは大きく異なっているため、「売れば売るほど赤字になる」といわれています。

 にもかかわらず、センチュリーがいまなお現役であり続けるのは「貴賓車」というひとつの文化を形作っているからにほかなりません。
 
「貴賓車」という文化そのものを否定してしまうと、センチュリーの存在意義そのものが失われてしまいます。

 それはすなわち、日本の自動車文化の大いなる喪失であるといえます。

 税金が適切に使用されているかどうかは、われわれひとりひとりが厳しい目を持って判断しなければなりませんが、今回の山口県での例をうけて「貴賓車」そのものが否定されることがないようにしたいものです。

※ ※ ※

 センチュリーには「一般人は購入することができない」や「購入のための審査がある」といった一種の都市伝説がささやかれることがあります。

 実際にはそのようなことはなく、基本的には誰でも購入することが可能です。

 たしかに、受注生産であるために購入の際には100万円程度の手付金が必要となることや、反社会的勢力でないことを確認する必要があることなどは事実ですが、これはセンチュリーに限った話ではありません。

 前述の都市伝説はこうした話に尾ひれがついたものだと思われますが、そうした「伝説」を生んでしまうこと自体が、センチュリーが別格の存在であることの証左といえるかもしれません。

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Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明

自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。

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