街じゅう丸ごと「時速30km」制限の大胆施策!? 電動キックボード「時速10km」制限も パリ市街の事例から考える「まちづくりの未来」とは

「クルマ中心」から「人中心」のまちづくりへ

 このようにゾーン30、ゾーン30プラス、そして事実上のゾーン20といった区域での交通政策は、地域住民が主体となって地元警察や行政を十分な協議をしたうえで実行に移される「まちづくり」の一環なのです。

 こうした「人中心のまちづくり」がいま、別の視点でも世界的に注目されています。

古い街並みが今も残るフランス・パリ市街の裏路地[画像はイメージです]
古い街並みが今も残るフランス・パリ市街の裏路地[画像はイメージです]

 もっともインパクトが大きいのは、フランスのパリでしょう。

 なんと、パリ市内のほとんどの区域で、2021年8月30日から最高速度が時速30kmとなりました。

 つまり、パリは「まるごとゾーン30」なのです。

 パリが目指しているのは、交通事故削減だけではありません。

 背景にあるのは、SDGsなど環境意識への高まりによる乗用車から公共交通機関へのシフト、クルマなどモノの「所有から共有」へのシフト、さらに新しいモビリティの登場など、様々な要因が考えられます。

 なかでも、近年急速に普及してきた電動キックボードについては、パリ市内での需要拡大に伴う事故の増加などを踏まえて、早々に対策を実施。

 2021年12月から、パリ市内でのシェアリング電動キックボードの最高速度は、時速10kmに抑制されています。

 自動車のみならず、新しいモビリティについてもゾーン規制が強化されたかたちです。

 パリ以外にも、欧米では都市中心部の車道を廃止して、歩行者や新しいモビリティを中心とした「ウォーカブル(安心して歩ける)」なまちづくりが進み始めているところです。

 日本でも今後、道路空間の構造を大きく変えることや、その地域にあった自動車、電動キックボード、電動車いす、立ち乗り式ロボットといった各種の新しいモビリティに対する適切な速度規制の実施を含めて、市街地を一体化して考える「人中心のまちづくり」が進むことが期待されます。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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