なぜトヨタ車が上位を独占?「ヤリス」「カローラ」はシリーズ合算!? 登録ランキングでトヨタが圧勝する2つの理由
トヨタが軽に力を入れていないことと関係?
トヨタ車が販売ランキングの上位に多く入るふたつ目の理由は、軽自動車が売れ行きを急増させたことです。
2022年上半期の国内販売状況を見ると軽自動車が38%を占めました。ホンダは、従来は小型/普通車を中心に販売していましたが、今は国内販売総数の54%が軽自動車になります。三菱は44%、日産も38%が軽自動車です。
以前の軽自動車は、主にダイハツとスズキが販売していましたが、昨今はホンダや日産、三菱も力を入れおり、国内の軽自動車販売比率が38%に達しました。
そうなると軽自動車に力を入れないメーカーは、トヨタ、マツダ、スバルに限られ、小型/普通車はトヨタの天下になりつつあります。
ちなみに1990年のトヨタのシェアは、小型/普通車と軽自動車を合計すると32%でした。2022年上半期も32%ですから(レクサスを含む)変化はありません。
ところが小型/普通車に限定すると、1990年におけるトヨタのシェアは42%でしたが、2022年上半期は50%に達します。
ほかのメーカーが軽自動車に力を入れて、小型/普通車の売れ行きを下げた結果、トヨタの小型/普通車におけるシェアが相対的に増えたのです。そのために国内販売ランキングの上位にもトヨタ車が多く並びます。
そしてトヨタは一部のダイハツ製OEM車を除くと、基本的に軽自動車を扱わないため、5ナンバーサイズに収まる小型車が豊富です。ヤリス、アクア、ルーミー、パッソ、シエンタ、ライズ、カローラアクシオ、カローラフィールダーがありますが、日本では5ナンバー車の人気が依然として高く、そのラインナップが豊富なら販売総数も増やしやすくなります。
その点で日産の5ナンバー車は、軽自動車を除くと、ノートや「セレナ」の標準ボディ、「NV200バネットワゴン」のみです。「マーチ」もありましたが、2022年8月末に国内販売が終了となりました。
ホンダもフィット、フリード、生産を終えた「シャトル」だけで、そのためトヨタはほかのメーカーに比べて5ナンバー車の充実度が高く、小型/普通車の販売ランキングでも有利になります。
逆にトヨタ以外のメーカーは、国内販売は軽自動車と少数の5ナンバー車に任せ、そのほかは海外向けに開発された3ナンバー車という構成です。国内販売を一部の車種に依存するため、小型/普通車の売れ行きを下げ、その結果、トヨタの一人勝ちになった事情もあります。
このほか販売店舗数の違いもあります。トヨタの販売店は、全国に約4600か所ありますが、日産は2100か所弱、ホンダは2200か所弱です。トヨタの販売網は日産やホンダの2倍以上ですから売れ行きを伸ばしやすいです。
※ ※ ※
トヨタ車が国内販売ランキングの上位を占める背景にはいろいろな理由があります。
とくにダイハツとスズキを除いたトヨタ以外のメーカーが、海外に目を向けて国内市場に消極的になり、日本のユーザーの共感を得られる商品が減ったことは、トヨタ車が好調に売られている大きな理由です。
ただしトヨタが今後も安泰とは限りません。ルーミー、ライズ、アルファードなどが好調に売られる一方で、「クラウン」の2022年上半期1か月平均登録台数(以下、同)は約1400台と低迷しており、そのために新型のクラウンクロスオーバーはセダンボディを維持しながら外観をSUVに変更しました。
また、「C-HR」は約1200台、カローラセダンは約900台、「カムリ」は約500台という具合に、トヨタ車のなかでも売れ行きの二極分化が進んでいます。
現在のトヨタは全店が全車を扱う販売体制に移行したので、人気車はすべての店舗で売れ行きを伸ばします。そうなると今後は、日産やホンダのように、少数の売れ筋車種に絞られる可能性もあります。
これからの展開としてトヨタは、例えばヤリスクロスからカローラクロス、さらに「RAV4」へ乗り替えるアップサイジングの販売促進などにチャレンジする必要もあるでしょう。トヨタの新しい売り方に期待したいです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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