なぜ「事故物件車」に告知義務ない? 「事故物件」には告知事項も! 気づかぬうちに市場流出している可能性も
「事故車」ではなく「事故物件車」の場合はどうなる?
一方、クルマの売買契約においてはそのような「心理的瑕疵」があった場合でも告知義務はありません。
レンタカーで集団自殺を図ったり、殺人事件で遺体を運んだりしたクルマであっても使用に関して差し支えない限りは関係ないようです。
ただし、犯罪に関わるクルマの場合はしばらくの間は警察が押収して隅々まで調べ、見分が終わったあとは持ち主に返されるのが一般的だといいます。
首都圏のレンタカー店で勤務していたS氏は次のように話しています。
「私がバイトをしていたときではないですが、貸したレンタカーで数年前、複数の男女が練炭自殺を図り、全員死亡した状態で発見されました。
レンタカー自体に損傷などはありませんでしたが、発覚後もしばらくの間、警察署が保管していたそうです。
その間、当然、お客さんにレンタカーとして出すことはできないのですが、NOC(ノンオペレーションチャージ)のような補償は受けられたようです。
警察から店舗にそのクルマが帰ってきたあと、車内の臭いがきつく、レンタカーとしてお客さまに貸し出すことは到底できないので、徹底的にクリーニングや消臭をして普通に業者オークションに出したと聞いています」
また、東海地方に住むK氏が中古車業者から購入した輸入車は、数か月前に事故で助手席の幼児(チャイルドシート無し)がエアバッグの衝撃で死亡したクルマでした。
「購入したときは相場より少し安いくらいでした。見た目も室内もとてもきれいで走行距離も短くお得だなと思いました。
ですが、購入したあと、その業者は中古車購入詐欺で何人も被害者が出ていることがわかりました。(のちに逮捕)
周囲の人からクルマの履歴を調べたほうがいいといわれ、運輸支局で『登録事項等証明書』の保存記録を取得し前オーナーに確認してみたところ、そのクルマは事故を起こして助手席に座っていたお子さんが亡くなっていたことがわかりました。
さらに、フレームも損傷していて修理はされていませんでした。結局、全損であることを明らかにして売却しました」
このような「事故物件車」であることがわかれば、クルマの所有者としては「もうこのクルマには乗りたくない」と思うのが一般的です。
買取り店にもっていけば相場で買い取ってくれますが、当然その際にも、クルマの過去を伝える義務はありません。そうして「事故物件車」はまた中古車市場で流通していくことになります。
もちろん、事故物件車は一般ユーザーの手に渡る以外に流通はさまざまです。
復旧が難しい事故物件車の場合は、解体してパーツとして販売したり、海外に輸出されたりすることも考えられます。
もし、「死亡事故歴あり」「集団自殺歴あり」などと告知して販売したら、激安であっても一般ユーザーが買うことはほとんどないと思われます。
内装に異変があるわけではなくにおいなどもまったく残っておらず、告知義務がある修復歴車でもない場合、扱うオークション業者や中古車販売業者でもなかなか判明することではないので、一般ユーザーがわかるはずもありません。
「なんとなく違和感を覚える」など、どうしても気になる場合は前出のK氏のように車体番号から登録事項等証明書を取り寄せて、前オーナーに確認する(なかなか勇気のいることですが…)ことくらいしか方法はなさそうです。
Writer: 加藤久美子
山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。
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