「水没時、脱出できない?」 クルマの横窓に「割れない合わせガラス」増加!? 知っておきたい採用される車種とは

大雨による冠水が予想されるときは、クルマでの移動を控えて、クルマが流されたり、冠水したりしないよう立体駐車場などに「垂直避難」させる対策が必要です。そうしたなかで、水没時に脱出するため窓を割る必要性が出てきますが、最近では割れづらいとされるフロント以外にも運転席側・助手席側の窓も割れづらいといいますが、なぜなのでしょうか。

冠水時、水没したクルマからの脱出は?

 毎年、台風やゲリラ豪雨シーズンになると多発するクルマの水没事故。

 大雨による冠水が予想されるときは、クルマでの移動を控えて、クルマが流されたり、冠水したりしないよう立体駐車場などに「垂直避難」させる対策が必要です。
 
 そうしたなかで、水没時に脱出するため窓を割る必要性が出てきますが、最近では割れづらいとされるフロント以外にも運転席側・助手席側の窓も割れづらいといいますが、なぜなのでしょうか。

最近では運転席や助手席に割れない「合わせガラス」を採用する車種も増えている?(YouTubeチャンネル:JAF Channelより)
最近では運転席や助手席に割れない「合わせガラス」を採用する車種も増えている?(YouTubeチャンネル:JAF Channelより)

 2020年9月から気象庁は台風の予想進路を「5日後」まで発表するようになりました。

 台風発生以降でないと明らかにできなかった予想進路を(台風に発達する前の)熱帯低気圧の段階で発表が可能となったため、台風の接近がわかったら早めに対策が望まれます。

 しかし、そうはいっても、大雨の日にクルマを使わざるを得ない場合もあります。

 さらに、見知らぬ土地に出かけていたときにゲリラ豪雨に遭遇することも。

 水かさが増えたアンダーパスに気づかず突入してしまうこともあるかもしれません。

 2014年に日本自動車連盟(JAF)がおこなったユーザーテストでは、水深60cmの水没状態では、セダン型乗用車の運転席ドアを開けることは大変な力が必要でほぼ不可能という結果が出ています。

 水圧によってドアを開けることが困難になる場合、推奨されているのが「サイドガラス」(助手席や運転席のドアガラス)を割ってそこから脱出するという方法です。

 クルマのガラスは強度や安全性などが国際的な基準で定められており大きく分けて、強化ガラスと合わせガラスがあります。

 これらは保安基準第29条で以下のように定められています。(大型特殊自動車、農耕作業用小型特殊自動車、最高速度 20km/h 未満の自動車及び被牽引自動車を除く。)

 (1)損傷した場合においても運転者の視野を確保できるものであること。

 (2)容易に貫通されないものであること。

 とくに(2)の「貫通されない」とは、ガラスが割れて飛散しない「合わせガラス」が使われ、その名の通り2枚のガラスの間に飛散防止のための特殊なフィルムが入っています。

 そのため、事故で衝撃を受けた際などにガラスが割れて乗員が死傷することを防ぐため、ガラスが飛び散らない仕様となっており、割ったとしてもひびが入る程度で車外に脱出することはできないのです。

 またこれまで、運転席や助手席は「強化ガラス」が使われており、強化ガラスは割ると粉々になって脱出が可能だったことから「ガラスを割って脱出する際はサイドガラスを割る」ことが定石でした。

 しかし、最近ではサイドガラスにも「合わせガラス」を使うクルマが増えており、「サイドガラスを割って脱出しようとしたが割れなかった」というケースが急増しているといいます。

 実は筆者(加藤久美子)も「割れないサイドガラス」に驚いた経験があります。

 2022年5月、取材用に三菱「アウトランダーPHEV」を借りて首都高速3号線を走っていた際「カチッ」という小さく鋭い音とともに助手席側の窓ガラスにひびが入りました。

 飛び石はフロントガラスに来るものだと思っていたので「サイドガラスに飛び石?」と驚いたのでした。

 ひびは一瞬で周囲が30cm程度の長方形になって広がってしまい、「バラバラに崩れ落ちるのでは?」と思い非常駐車帯にとめて状況を確認。保険会社や車両の所有者である三菱にも連絡をしました。

 このまま乗っていて大丈夫なのか、ガラスが崩れ落ちるのではないかと心配しましたが、
「フィルムが入っていますから崩れ落ちることはないですよ」とのアドバイスをいただき、その後、スピードを落としながら走行し、帰宅してドアを開けたときにはさらに亀裂が広がりましたが、崩れ落ちることはありませんでした。

 なぜ、ガラスは崩れ落ちなかったのか、その答えはフロントガラスと同様、助手席側にも「合わせガラス」が使用されていたからです。

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