なぜクルマの「スタートボタン」位置はバラバラ? 鍵穴時代は「ハンドル右側」が定番も 個体差が出てきた理由とは

今後は「センターコンソールに近い位置=ハンドルの左側」が主流に?

 スマートキーの普及により、エンジンやシステムの始動はスタートボタンを押すだけで出来るようになりました。

 個人差はありますが、ボタンを押すという動作は利き手の左右によって生じる負担はそれほど大きくないことから、スタートボタンの配置については、必ずしも右側である必要はなくなりました。

 クルマを動かす際には、スタートボタンによってエンジンやシステムを始動させた後、右ハンドル車であれば左手でシフトレバーやスイッチを操作するのが一般的です。

 そのため、一連の動作を左手で完結させられるようにするために、ハンドルの左側プッシュボタンを配置するのは合理的といえます。

 また、プッシュボタンが押されると、ワイヤーハーネスを介して各部へ情報が伝達されることになりますが、車体中央に近いところにプッシュボタンを設置することでワイヤーハーネスの量を削減でき、コスト削減や軽量化に貢献するというメリットも存在。

 もちろんその効果は微々たるものですが、現代のクルマはそうした積み重ねによって成り立っている部分も大きく、わずかなコスト削減や軽量化も決して無視することはできません。

 つまり、ユーザビリティの向上やコスト削減、軽量化などのメリットを総合した結果、センターコンソールに近い場所、つまり右ハンドル車であればハンドルの左側にプッシュボタンを配置する車種が増えたと考えられます。

アルピーヌ「A110」のスタートボタンはセンターコンソールの中央に設置
アルピーヌ「A110」のスタートボタンはセンターコンソールの中央に設置

 一方、依然としてハンドルの右側にプッシュボタンがある車種もあります。例えば、ホンダ「インサイト」や「CR-V」が挙げられますが、これは日本車でありながらそのほとんどが北米での販売となっていることが大きな理由です。

 北米で販売されるインサイトやCR-Vは当然左ハンドル仕様となっていますが、プッシュボタンはセンターコンソールに近い位置、つまりハンドルの右側にあります。インサイトやCR-Vの右ハンドル仕様は相対的に少ないため、右ハンドル仕様のためにインパネ周りのデザインを変えてしまうとコストが大きくなってしまいます。

 そのため、インサイトやCR-Vでは、右ハンドル仕様でもプッシュボタンはハンドルの右側に設置していると考えられます。

 そのほか、各車種によって個別の事情はありますが、さまざまなメリットとデメリットを総合すると、プッシュボタンはセンターコンソールに近い位置にあった方が合理的であると言えます。そのため、今後ハンドルの右側にプッシュボタンを配置する車種は少数派となっていくかもしれません。

※ ※ ※

 ちなみに、かつてポルシェの一部のモデルでは、ハンドルの左側にイグニッションキーが設置されていました。これは、コースサイドにとめられたマシンへとレーシングドライバーが走って乗車し、エンジンを始動してスタートするという「ルマン式スタート」というモータースポーツのスタート方式に由来しています。

 コンマ1秒を争うモータースポーツにおいては、できるだけドアに近い方にイグニッションキーがあった方が有利であることから、ポルシェの左ハンドル車ではハンドルの左側にイグニッションキーが設置されていました。

 ただ、そうした特殊な事情を除けば、イグニッションキーをハンドルの左側に配置する合理的な理由はあまりないようです。

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2件のコメント

  1. 「単にメーカーの思想。」
    1行で終わる記事。

  2. 一昔前はトヨタは右側が、ホンダは左側が多かったけど、ここ数年でデビューした車種は逆になっているよね。

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