待望の6速MT追加! 「スープラは終わらない…」最速試乗で見えたワクドキなGRスープラの魅力は? 伝説の新章始まる!?
6速MTに注目しがちだけど…ほかにも改良された部分はどこ?
今回の改良は6MTの追加だけでなく、フットワークも大きく手が入っています。
具体的には、全グレードでショックアブソーバーの減衰特性の最適化、スタビライザーブッシュの特性変更、制御系(AVS/EPS/VSC)の見直しを実施。
これに加えて、RZは1本あたり1.2kg軽量化された新デザインの19インチ鍛造アルミホイールも採用されています。
硲氏は「フットワークは走りのリズムを生むキッカケとなるステアフィールに注力し、それに合わせてサスペンションのチューニングをおこなっています」と教えてくれました。
実際に走らせてみると、まさに「成熟」という言葉がふさわしい印象です。
従来モデルは、基本素性に優れるもどこかクルマがカクカク動く印象で、それがピーキーな印象に繋がっていたのですが、新型はとにかく「素直」。
具体的にはコーナリングの一連の流れに連続性が増しているので、クルマの動きの予測がしやすくなったといった感じでしょうか。
従来モデルは予期せぬテールスライドにドキッとすることもありましたが、新型はクルマなりに走らせると基本は安定方向であるものの、テールを沈めて踏ん張って蹴り出す感覚はより強まっています。
縁石を乗り越えたときのアタリの優しさはもちろん、クルマの動きも穏やかです。ちなみにタイヤ(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)の変更はないので、サスペンションのセットアップ変更でより接地性が高まったのでしょう。
これだけいうと、「走りはつまらなくなったのね?」と思われるかもしれませんが、ドライバーがフロントにシッカリと荷重をかけてあげれば、FRらしい大胆なドリフトも可能です。
そのときのコントロール性も非常に高く、従来モデルで深いアングルにするのは至難の業でしたが、新型は筆者レベルでも大丈夫です。
とはいうもののドリフトコントロールは、387ps/500Nmのパフォーマンスと2470mmのショートホイールベースなので、「GR86のように容易に」とはいきません。ただ、従来モデルよりも「挑戦したくなる」走りになっているのは間違いないと思います。
ひとつ残念なのは、クルマの限界が上がったことで、シートのホールド性やフィット感に物足りなさを感じてしまったことです。
GR86/GRヤリスのシートのレベルが高いことを思うと、GRスープラもそこに近づけてほしいなと。
個人的には、RZはタンカラー内装よりもスポーツシートのほうが必要のように思います。GRパーツでの設定を期待したいところです。
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6MT追加に話題がいきがちですが、今回の改良でGRスープラは、クルマとしてのバランスが整ったと思っています。
そして今回、試乗して強く感じたのは、兄弟車「Z4」との違いよりも、GRヤリス/GR86との共通性でした。
つまり、GRとしての「味」が明確になってきた証拠でしょう。「その味とは何なのか?」――筆者は「コントロールするのはドライバー」「懐は深く」「八方美人ではなくキャラを立てる」そして「ワクドキ」だと思っています。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
難しいのはシフトがAT→MTの車ってAT前提で設計しているから、ドライバーとシフト、クラッチ、ブレーキ、アクセルの位置関係が微妙にずれていて不評を買うんだよな。
サイドブレーキが電動のままだということに触れていない。