三菱×日産で日本のクルマは寂しくなる? 「良い選択」もそこにある不安
日産傘下になる三菱自工。カルロス・ゴーン日産社長兼CEOは「Win-Win」と言い、確かにそうかもしれませんが、「日本のクルマ」にとっては今後、厳しい状況になっていくかもしれません。
三菱と日産&ルノーは「よい組み合わせ」
2016年5月12日(木)、日産は三菱自工(三菱自動車工業)へ出資し、筆頭株主になることを発表しました。これは事実上、三菱自工が日産の傘下になることを意味します。先月発覚した、三菱自工による驚愕の燃費不正問題から1か月もたたずに、再び驚きのニュースです。
三菱自工は、日産&ルノーグループの一員になるわけですが、この新しい体制に対して、いろいろな意見が飛び交うことでしょう。気に入らないという人もいれば、よかったという人もいるはず。私(鈴木ケンイチ:モータージャーナリスト)は、「よい組みあわせ」だと思いました。
まず、ルノー、日産、三菱自工で、それぞれの得意分野やエリアが異なります。ルノーは欧州中心のブランドですし、日産は中国や北米が得意。2015年でいえば、日産は中国で年間およそ125万台、北米でおよそ201万台を販売しましたが、アジア・オセアニアは約36万台にとどまります。
そして三菱自工はアセアン諸国とロシアで人気が高く、たとえば北米における2015年度の販売実績は約13万5000台と日産に大きく水をあけられていますが、アセアン諸国とオーストラリア、ニュージーランドにおけるそれは約30万台(アセアン諸国およそ21万8000台、オーストラリア+ニュージーランドおよそ8万2000台)と、決してひけを取らない数字です。
また三菱自工の営業利益のうち、約7割がアジアおよび欧州市場から上がっています。三菱自工はWRC(世界ラリー選手権)やダカールラリーなどで長らく活躍していたこともあり、海外では意外とブランド力が強いのです。
技術面では日産が、幅広く先進的なリーダー役を務めるでしょう。2015年度における両社の技術開発費で比較すると、三菱自工が787億円なのに対し、日産は5319億円と実に約7倍もの規模で活動しています。
とはいえ三菱自工にも電気自動車の高い技術が備わっており、2009(平成21)年には量産型電気自動車「i-MiEV」を世界に先駆けて発売しています。軽自動車に関するノウハウも三菱自工が、やはり一日の長があるでしょう。燃費不正問題という不名誉な話題の渦中にはありますが、日産の軽ワゴン「デイズ」「デイズ ルークス」は、三菱自工がOEM生産していたという実績があります。
つまり両社は、文字通りの補完関係を築けるはずです。日産の社長兼CEOであるカルロス・ゴーン氏も、今回の発表の席にてこの合意が「双方にWin-Winとなるもの」と述べています。
※各社の2015年度における販売実績、営業利益、技術開発費はそれぞれ、三菱自工「2015年度決算説明会 プレゼンテーション資料」および日産「2015年度決算発表 プレゼンテーション資料」による。